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税理士事務所のM&Aを
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誤解を正し、賢く、
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単なる「売却」に限らない選択肢がある
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税理士事務所は「一人で続ける」しかないのか ~パートナーと組んだ2つの事例~
税理士事務所の将来を考えるとき、多くの先生が思い浮かべるのは 「事務所を続けるか」「引退するか」といった選択 ではないでしょうか。 しかし実際には、その中間にさまざまな選択肢があります。 特にここ数年は、税理士法人の増加や採用難、顧問先ニーズの高度化などの影響 もあり、事務所のあり方を見直す先生も増えています。 たとえば、下記のような形です。 こうした動きは、いわゆる「事務所の売却」とは少し異なります。むしろ、 事務所をより良い形に発展させるための選択 と言えるかもしれません。 今回は、実際に弊社にご相談いただいた事例の中から、 「パートナーと組むことで事務所の未来を切り拓いたケース」 を2つご紹介します。 最初の事例は、父と息子のお二人が社員税理士となっていた税理士法人からのご相談です。ある日、 お父様がお亡くなりになり、税理士法人として存続できる期限があと6か月という状況 になりました。税理士法人は社員税理士が一定数いなければ存続できません。そのため、突然の出来事とはいえ、期限までに対応を決める必要がありました。 このようなケースでは、..
小杉 啓太
5 日前読了時間: 6分


税理士事務所のM&Aの実務におけるリスクと業界再編の構造
税理士法人・税理士事務所のM&Aは、一般企業のM&Aのように単純な「企業価値評価」や「株式譲渡」で完結するものではありません。そこに横たわるのは、 「顧問先との信頼関係」という極めて人的・非定量的な資産 です。そのため、数値評価だけではとらえられない現実的な課題が多く存在します。本記事では、実務上しばしば争点となる二大問題、すなわち「顧問先減少リスクの扱い」、「税賠リスクの帰属」を中心に整理します。 あわせて、事務所同士の提携や分業が広がる中で、 顧問先・人材・ノウハウがどのように移転・再配置され、税理士業界全体の構造がどのように変化 しつつあるのか、その方向性についても考察します。 税理士法人・税理士事務所におけるM&Aで最も現実的な問題は、「顧問先の減少リスクをどのように金額へ反映させるか」です。税理士法人・税理士事務所の価値は、建物や設備といった有形資産よりも、顧問契約に象徴される「人的信頼関係資産」に依拠しています。ところが、所長税理士が退任・転出すれば、その信頼関係が維持できず、顧問先が離脱する可能性が高まります。...
小杉 啓太
3月20日読了時間: 7分


税理士法人のM&Aと持分譲渡の実務~個人事務所との違い・吸収合併・退職金設計まで解説~
個人の税理士事務所では、顧問契約の主体は所長個人であり、 事業の譲渡といっても、実務的には「顧問先との契約関係」と「人的信用」を引き継ぐ行為に近い ものとなります。顧問先が承諾し、引継ぎ先の税理士が倫理規定・独立性の要件を満たしていれば、所長自身の意思決定のみでスキームを組み立てることが可能です。 これに対し、税理士法人は税理士法上、会社法の持分会社(合名会社等)に関する規律の準用を受ける「社員税理士の共同事業体」です。社員一人ひとりが出資持分を保有し、業務執行権・議決権を通じて法人の意思決定に関与するため、譲渡は「一人の所長の意思」では完結しません。 社員総会決議、定款上の持分譲渡制限、税理士会・日本税理士会連合会への届出・登録変更など、多層の承認プロセスが前提 となります。 さらに重要なのは、譲渡の対象が「法人の事業」なのか「法人そのものなのか」「出資持分なのか」によって、課税関係が大きく変わる点です。個人事務所の譲渡は、概ね事業用資産の譲渡や営業権の譲渡として整理されますが、税理士法人では、 法人税法上の資産譲渡、社員個人の持分譲渡によ
小杉 啓太
3月13日読了時間: 6分


税理士法人は「みなし合名会社」――出資持分の純資産価額評価とみなし配当・M&A税務リスクを徹底解説
税理士法人は、税理士法に基づく特殊な法人形態であり、その本質は 「社員を税理士に限定した、商法上の合名会社に準ずる特別法人」 と整理されます。 すなわち、株式会社のように株式を発行する法人ではなく、社員が「出資持分」という形で財産的権利を保有する持分会社としての性格を持ちます。 このため、出資者である社員は原則として無限責任を負う合名会社の枠組みを前提にしつつ、税理士法により社員資格が税理士に限定されるという、二重の制約のもとで法人運営が行われます。 税理士法において、社員の法定脱退事由が定められており、死亡、破産、税理士資格喪失等の事由が発生した場合には当然に社員資格を失い、脱退することになります。 加えて、やむを得ない事由があるときには、社員はいつでも任意脱退することができるとされています。 いずれの場合も、税理士法により会社法等が準用され、脱退に際しては出資持分の払戻しが行われるという仕組みが採用されています。 ここで重要なのは、 税理士法人には株式会社における「自己株式」「金庫株」という概念が存在しない点 です。出資持分の「買い取り
小杉 啓太
3月6日読了時間: 9分


会計法人を活用した税理士事務所のM&Aの現実
売上1億円・事業所得2,500万円の個人の税理士事務所を年間の売上相当額1億円で譲渡し、一括で譲渡対価を受け取った場合、この1億円は雑所得として総合課税の対象になります。累進税率に加えて住民税や社会保険料まで考慮すると、 実際の手取りは売却額の半分以下にとどまる可能性が高くなります 。高収入帯ほど税率が上がるため、出口で一時的に多額の所得を計上する個人事業主ほど負担は重くなりがちです。 これに対し、会計法人として事務所を運営している場合は、オーナー個人が株式を譲渡する形をとることができます。株式譲渡益には原則として申告分離課税が適用され、概ね20%前後の税率で済むため、売却額の約8割が手元に残る水準が期待できます。同じ1億円の譲渡対価でも、 個人事業(税理士事務所)売却と株式譲渡では、最終的な資産形成に数千万円単位の差が出ることも珍しくありません 。この意味で、会計法人を活用した出口戦略は、数字上は非常に魅力的です。 会計法人と個人の税理士事務所を併用するスキームでは、顧問契約を会計法人側で締結し、個人事務所は会計法人からの外注を受ける立場に
小杉 啓太
2月27日読了時間: 7分


会社法と税理士法が生む税理士法人の制度的リスク整理
税理士法人は、会社法上の「持分会社(合名会社)」を準用することで成立しています。これは、税理士法に基づき設立される士業法人でありながら、その内部構造は明らかに一般の企業体とは異なります。根拠条文上は「会社法の合名会社に関する規定を準用する」とされ、社員(社員税理士)は無限責任を負います。 この「合名会社型」の準用こそが、税理士法人等の士業法人特有の法的リスクを内包 している点です。 たとえば、税理士法人では社員の責任範囲に制限がなく、法人の債務が社員(社員税理士)個人に波及する可能性があります。とはいえ実務上、税理士法人が銀行借入や顧問先への損害賠償義務を負うことは稀です。しかし、破産・脱退・死亡といった境界事象では、無限責任が再び「生き返る」ことになります。 死亡した社員(社員税理士)の債務引継ぎや脱退後の債務負担をめぐる取扱いは、会社法上の一般原則と相続税法上の「債務控除」規定が複雑に交錯 します。つまり、法制度そのものが税務上・相続上のトリガーを内包しているのです。 例として、無限責任社員が死亡した場合、 法人が債務超過にあるときは、そ
小杉 啓太
2月13日読了時間: 6分


税理士事務所M&Aの設計図 ― 税務・評価・統合後経営までをどう組み立てるか
税理士業界におけるM&Aというと、「小規模事務所が業務拡大を望む大手に吸収される」という構図を想起される方も多いでしょう。しかし、実際に増えているのは「少が大に売却する」関係ではなく、 「事業拡大」という同じ目的を持つ税理士同士が、対等な立場で経営統合 するケースです。 背景には、顧問先の高齢化、業務のデジタル化、採用力の限界といった環境要因があります。 単独での成長に限界を感じた税理士が、理念や文化の近い他事務所と手を組み、新たな体制で拡大を目指す、この「共創型統合」 は、いまや税理士事務所のM&Aの主流になりつつあります。 とくに東京都心部だけでなく、地方圏でも「地域連携型M&A」が増加しています。近隣同業者と協働することで、 業務領域の重複を減らし、採用・育成・営業を共同化できるという経営的メリットが大きい からです。 かつては「引退のための売却」だった動機が、 「発展のための統合」へと変化 しており、この発想転換こそ、税理士業界が一段階成熟してきた証といえるでしょう。 税理士個人事務所を譲渡したとき、その所得区分を正確に理解してお
小杉 啓太
2月9日読了時間: 6分


税理士法人の事業承継における譲渡対価分割払いの合理性と契約・税務設計のポイント
税理士法人や会計法人といった士業法人の事業承継やM&Aでは、 譲渡対価を5年程度の分割払いで受け取る形式が一般化 しています。その背景には、資金繰り上の合理性に加え、税務上および実務運営上の要請があります。 税理士法人の営業資産は、製造業のような有形設備ではなく、 顧問先契約・信頼関係・職員体制など「人的基盤」に大きく依存 します。そのため、譲渡直後の段階では顧問先の維持が不確実で、未来の収益を前提に評価せざるを得ません。買い手が一括で多額を支払うと、実際の収益が想定に届かない場合に損失を抱える危険があり、契約構造としてリスク調整の仕組みが必要になります。 加えて、税理士業法人は担保資産が乏しく、金融機関によるM&A資金の融資が難しいことが多いのが実情です。 そのため分割払いは、 買主が一括で資金調達できない部分について、売主が譲渡対価の後払いを認めることで、実質的に資金面を支える構造 となります。 このモデルこそ、税理士法人特有の資金調達環境と実務に即した合理的な対応といえます。 一方、 譲渡側も分割払いによって所得税の急増を回避できるた
小杉 啓太
2月6日読了時間: 6分


税理士法人に内部留保が溜まる構造と税務リスク ― 退職金・外注費・解散時課税を踏まえた承継設計の実務 ―
税理士法人は、税理士法に基づく士業法人として、原則すべての社員が無限責任を負う合名会社型の法人形態を採っています。そのため、形式上は法人であるものの、法人に帰属する利益や財産も含め、経済的・法的リスクは最終的に社員個人の責任と表裏一体の関係にあります。にもかかわらず実務上は、株式会社と同様の感覚で利益が法人内に滞留し、 明確な出口を持たないまま内部留保が過度に積み上がっているケースが少なくありません 。 要因としては、以下の理由が挙げられます。 実際、税理士法人の解散や社員退社時には、持分払戻し額が「純資産価額」に基づいて算定されるため、内部留保が膨らんでいればいるほど法人の評価額が上昇し、結果として法人解散時に多額の残余財産分配が生じ、社員や相続人側で課税インパクトを受ける構造になります。こうした 課税面・事業承継面のリスクを見据えると、「内部留保を貯めない経営設計」が税理士法人などの士業法人には必須 です。 最も王道的な内部留保取り崩し策が、代表社員や社員への退職金支給 です。法人の損金算入要件を満たせば、税理士法人は退職金として支給額
小杉 啓太
1月30日読了時間: 5分


税理士事務所・税理士法人の廃業時に問われる会計・税務論点
税理士業務の廃業・承継を検討する際には、「税理士事務所(個人)」と「税理士法人」とで、法的性質や会計・税務上の取り扱いが大きく異なる点を整理しておく必要があります。本記事では、「税理士事務所(個人)」と「税理士法人」を明確に区別したうえで、廃業・解散時に問題となりやすい実務論点を順に整理します。 個人の税理士事務所が廃業、または所長の死亡により閉鎖する場合には、顧問契約の承継方法や業務報酬の帰属経路に注意が必要です。一般的には、会計法人(別法人)を通じて顧問料を継続的に受け取るスキームが採用されますが、税理士法で独占業務(申告書作成・税務相談など)に関する報酬を会計法人に直接付け替えることは認められていません。これを誤ると、 形式的に外注費を計上しても「実質を伴わない」として、経費否認や所得付替のリスク が生じます。 税務調査では、 会計法人の収益割合、職員給与の支払元、備品の使用実態などが精査され、実際にどちらが主たる業務主体であるかが問題 になります。たとえば、会計法人の収入が大きいにもかかわらず、職員給与の大部分が個人事務所から支払われ
小杉 啓太
1月23日読了時間: 7分


税理士法人の解散時における持分払戻しの法的構造と税務上の留意点
税理士法人などの士業法人は、会社法上の「持分会社」(具体的には合名会社の規定を準用)として位置づけられており、その組織運営や清算は会社法と税理士法の双方によって規律されています。 税理士法人が解散する場合、社員税理士への財産の分配は会社法に基づき、定款または社員税理士全員の同意によって決定 することができます。この分配が、いわゆる「持分払戻し」にあたります。 この持分払戻しは、単なる預金や出資金の返還ではなく、法人が保有する純資産の中にある残余財産を、各社員税理士の出資持分割合に応じて清算するという性質を持っています。したがって、 算定の基礎となる「財産の現況」は、解散時点の純資産価額(資産から負債を控除した金額)で評価するのが原則 です。会社法では、退社時の払戻についても同様の趣旨を定めており、解散という法人の終期においてもこれを準用することが妥当とされています。 実務上、論点となるのは評価対象に含める範囲です。現預金・有価証券・固定資産といった明確な資産は算定が容易ですが、 税理士法人などの士業法人の場合、経営実態の中に「営業権」「顧客継
小杉 啓太
1月16日読了時間: 6分


税理士法人で社員が1人になったら何が起きるのか ― 解散リスク・清算・承継までの整理
税理士法人において、社員が1人となった場合は、単なる人員不足では済まされません。税理士法により、 「社員が1人となり、その日から6か月を経過してもなお2人以上にならないときは、その6か月を経過した時に解散する」 と定められています。つまり、社員数が1人になった瞬間から、法人の“タイマー”が動き出すのです。6か月以内に新しい税理士を社員税理士として迎え入れなければ、税理士法人は法定の解散事由に該当します。 この6か月間は猶予期間であり、その間に社員数を回復すれば通常どおり業務を続けることが可能です。一方で、新規での社員税理士の加入が難しい場合には、任意に解散を選択することもできます。税理士法では「総社員の同意による解散」を認めており、この場合、社員1人が存在すればその同意で解散が可能です。したがって、 6か月経過による法定解散を待つのではなく、意思決定による任意解散を選ぶことで、日程や清算方法を自ら設計できる柔軟性 があります。 任意解散では、解散日・清算人の選任・残余財産の処分方法を定款や社員決議で設定します。一方、6か月を経過して自動的に解
小杉 啓太
1月9日読了時間: 6分


税理士法人における急逝リスクと承継設計
税理士法人は、税理士法を根拠とする士業法人であり、会社法上は合名会社に準じる「持分会社」として位置付けられています。社員全員が無限責任を負い、業務執行権を持つ点が株式会社や合同会社と決定的に異なり、 社員の死亡・退社がそのまま法人の存立と債務負担に直結する構造 になっています。 このため、 定款の設計ひとつで「急逝時に承継がスムーズに進む法人」になるか、「急逝と同時に機能不全に陥る法人」になるかが左右 されます。日税連の「税理士法人の手引き」や各会のQ&Aでは、定款の作成、社員の加入・脱退、持分の払戻し、合併・解散等について、会社法(合名会社)や一般社団・一般財団法人法の準用関係も含めて整理されており、承継シナリオを描く際の前提資料となります。 急逝リスクを意識する場合、とくに重要になるのが「組織・存立自体に関する行為」の意思決定ルールです。定款変更、持分の譲渡、解散、合併などは業務執行とは別枠とされ、原則として総社員の同意が必要と整理されているため、所長が急逝し社員が1名だけ残る、あるいは対立が生じた場面では身動きが取れなくなるリスクが
小杉 啓太
2025年12月26日読了時間: 6分


親族内承継か第三者承継か?税理士事務所の承継で見落とされがちな設計課題
税理士法人・税理士事務所における 親族内承継の最大の特徴は、「血縁だからこそ難しい」 という点にあります。子どもや配偶者などを後継者と想定していても、いざバトンを渡す段階になると、経営能力・人望・家庭内の力関係といった要素が複雑に絡み合い、「本当に任せて大丈夫か」「他の兄弟への公平感はどうするか」といった問題が一気に顕在化します。親族内での対立がこじれると、事務所外の第三者が絡むトラブルよりも深刻化しやすく、顧問先にまで悪影響が及ぶことも珍しくありません。 税理士法人を親族内承継する場合は、出資持分の相続税評価が重くのしかかります。 内部留保が多いほど純資産価額は膨らみ、持分を引き継ぐ子の相続税負担が増大 します。他方で、事務所を継がない兄弟には現金や不動産など別の財産でバランスを取る必要があり、「事務所の価値をどのレベルで見るか」という評価の決め方次第で、相続人同士の納得感に大きな差が出ます。こうした事情から、親族内承継では、事務所の承継スキームと遺言・遺産分割を切り離さず、「誰が経営権を持ち、誰がどの程度の財産を受け取るのか」を一体として設
小杉 啓太
2025年12月19日読了時間: 6分


税理士法人承継のリアル:3つの方式と実務リスクを整理
税理士法人をどのような形で承継するかは、近年の税理士法人経営における最大の関心事の一つです。少子高齢化の影響により後継者不在の税理士法人が増加する一方で、開業税理士や他法人が事業承継型のM&Aに関心を持つケースも増えています。しかし、 税理士法人には独自の法的制約が存在し、その構造を正確に理解しないと、形式的な承継が思わぬリスクを伴う ことになります。 税理士法人は税理士法に基づき設立できる士業法人であり、構成形態としては会社法上の合名会社を準用しています。つまり、 社員はすべて税理士であり、各社員が無限責任を負うことが前提 です。業務執行権も全社員(社員税理士)にあり、資本関係よりも「人的信頼」と「資格責任」による組織体である点が特徴です。そのため、株式会社のように株式譲渡により法人支配権を移転する仕組みは採れず、承継は下記の3つの方法のいずれかで進めることになります。 (1)持分譲渡(社員の地位移転) (2)合併(法人格の包括承継) (3)事業譲渡(事業資産の個別移転) この3つの方式はそれぞれ、法的効果・税務影響・運営
小杉 啓太
2025年12月12日読了時間: 7分


税理士法人のM&Aと承継をどう設計するか
税理士法人や税理士・会計事務所のM&Aでは、「年間売上の1年分」あるいは「3~5年分の営業利益」といったシンプルな指標が相場感として広く流通しています。個人事務所であれば、「1年間の売上=売却価格」という分かりやすい説明が好まれ、譲渡側の税理士・譲受側の税理士の双方にとって交渉の叩き台にしやすいことも相まって、実務慣行として定着しているのが実情です。もっとも、 この「年間売上1年分」という値はあくまで目安にすぎず、実際のM&Aでは案件ごとに個別の調整が欠かせません 。 実務の税理士法人のM&Aの現場では、例えば「年間売上×0.7年分」から「年間売上×1.5年分」程度まで、同じ売上規模でも大きくレンジが振れることが珍しくありません。倍率を押し上げる要因としては、下記の点が挙げられます。 逆に、所長ワンマンで顧客との信頼関係がほぼ所長個人に依存していたり、低単価・高負荷の顧問先が多い場合には、同じ「年間売上1年分」というラベルでも実質的な価値は大きく割り引かれ、交渉の過程で減額要請を受けることが多くなります。この意味で、 「年間売上1年分」とい
小杉 啓太
2025年12月5日読了時間: 6分


税理士法人設立で失敗しないための実務設計
税理士法人の設立に際して見逃されがちなのが「内部留保」の問題です。押さえておきたいのは、内部留保とは法人の利益のうち、配当や分配されずに社内に留め置かれた資金である点です。特に税理士法人や税理士事務所の法人化において、この内部留保の扱いを誤ると後年深刻な経営リスクにつながります。組織形態上、税理士法人は社員税理士同士の持分関係や責任範囲が無限連帯となるため、将来的な解散や事業承継時の分配額も純資産価額が基準となります。 内部留保が膨らむと、退職する税理士の持分精算時の課税負担や譲渡金銭の調整負担が重くなります 。 内部留保の扱いを誤ると、問題が表面化するのは設立から数年後です。特に社員税理士の入退社が想定より多い税理士法人では、純資産価額の変動が持分精算に直結し、税理士同士の合意形成にも影響します。また、税務署は内部留保の増減理由を重視するため、 税理士法人として毎期の利益処分方針を明確にしておくことで後の指摘を避ける効果 もあります。 加えて、過度に内部留保を積み上げると留保金課税等の追加課税を受けるケースもあり、税理士が節税を意図していて
小杉 啓太
2025年11月28日読了時間: 6分


60代から本気で考える“税理士事務所の未来”
税理士の皆様が「自分の引退後」「事務所の未来」を真剣に見つめ直すべき“適齢期”とはいつでしょうか。現場での支援実績から確信するのは、50代や60代前半の税理士が事業承継やM&Aを意識し始め行動を起こすケースが顕著に増えていることです。国税庁や税理士会の統計でも、全国の税理士所長は70代・80代と高齢化が進行していますが、実際に M&Aや承継の相談に踏み出しやすいのは、まだ体力・気力・人的ネットワークも活発な60代前半 なのです。 現実的には、地方の税理士事務所の場合、「若い後継者候補がおらず、職員の採用も困難」「有資格者確保ができない」「自分の健康が不安」といった悩みを抱える税理士が多くいます。こうした現状に対し、 多くの税理士が“自分が元気なうち”に承継パートナーを探し、顧問先・職員・地域社会に安心感を与えたいと考えています 。M&Aを考える税理士の目的は「譲渡対価」以上に、 自分がいなくなった際の事務所存続や職員・顧問先の継続支援にあり、責任感・倫理観から積極的に準備する傾向が強まっています 。 また、都市部の事務所でも、税理士自身の高齢
小杉 啓太
2025年11月21日読了時間: 6分


税理士事務所M&Aの実態と成功の条件:合併・譲渡・承継のリアルと本質
近年、税理士業界では事務所の合併・譲渡・承継といったM&Aの動きが急速に増えています。少子高齢化と人材不足を背景に、 税理士が「どのように事務所を続けるか」を真剣に考える時代 が到来しました。本記事では、実際の現場から得られた具体的事例をもとに、税理士事務所におけるM&Aの実務と留意点、そして成功のための本質を紹介します。 税理士事務所のM&Aというと、「引退」「売却」「経済的メリット」といったイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、実際の現場でM&Aに踏み切る税理士の多くは、決してお金だけを目的としていません。背景にあるのは、 地域に根ざした事務所として「どうすれば安定した形で業務を継続できるか」 という現実的な課題です。 全国的に税理士の高齢化が進み、特に地方では後継者を確保できず、優秀な職員の採用も難しい状態が続いています。ある60代の税理士は、将来に不安を感じながらも 「事務所を信頼できる相手につなぐことが職員と顧問先への責任だ」 と判断し、事業譲渡を選択しました。譲渡後は社員税理士として新法人に残り、顧問先と職員を見守りながら
小杉 啓太
2025年11月14日読了時間: 6分


税理士事務所M&Aで失敗しないために——承継方法と報酬設計の実務ポイント
税理士事務所のM&Aは、「売買」や「引退」というイメージが先行しがちですが、実際には 事業の継続と関係者の幸福、そして未来の選択肢を拡げる重要な手段 です。全国の税理士にとって、M&Aは単なる資金獲得や引退対策ではありません。不安定な採用環境や後継者難、職員の雇用維持、顧客の信頼継続といった現場の課題に、リアルに向き合う必要が出てきています。 例えば、税理士事務所を営む多くの所長が、 表面的な譲渡対価よりも「職員や顧問先を守りたい」「自身が元気なうちに安心な継続体制を整えたい」と願ってM&Aを検討 しています。譲受側の税理士も「顧問先だけでなく職員を含めて事業拡大したい」「新拠点の地元雇用を維持したい」という思いが根底にあります。そのため、税理士事務所M&A成功の鍵は、双方が「事業の未来」を本気で対話・協働して考える点にあります。 税理士事務所のM&Aは「金銭だけの問題では済まない」「一時的な引退策ではうまくいかない」という現場のリアリティを、所長や志ある事務所が直視すべき重要なテーマです。日々、多くの所長税理士が 「自分はまだ現役」「将来不
小杉 啓太
2025年11月7日読了時間: 7分
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