税理士事務所は「一人で続ける」しかないのか ~パートナーと組んだ2つの事例~
- 小杉 啓太

- 2 日前
- 読了時間: 6分
税理士事務所の将来を考えるとき、多くの先生が思い浮かべるのは「事務所を続けるか」「引退するか」といった選択ではないでしょうか。
しかし実際には、その中間にさまざまな選択肢があります。特にここ数年は、税理士法人の増加や採用難、顧問先ニーズの高度化などの影響もあり、事務所のあり方を見直す先生も増えています。
たとえば、下記のような形です。
こうした動きは、いわゆる「事務所の売却」とは少し異なります。むしろ、事務所をより良い形に発展させるための選択と言えるかもしれません。
今回は、実際に弊社にご相談いただいた事例の中から、「パートナーと組むことで事務所の未来を切り拓いたケース」を2つご紹介します。
最初の事例は、父と息子のお二人が社員税理士となっていた税理士法人からのご相談です。ある日、お父様がお亡くなりになり、税理士法人として存続できる期限があと6か月という状況になりました。税理士法人は社員税理士が一定数いなければ存続できません。そのため、突然の出来事とはいえ、期限までに対応を決める必要がありました。
このようなケースでは、「税理士法人を解散する」、「個人事務所として再スタートする」といった選択が取られることも少なくありません。
しかし、息子であるA先生には別の想いがありました。それは、「事務所の方向性を変えたい」ということでした。それまでの事務所は、いわゆる記帳代行中心のスタイルでした。もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
A先生としては、「これからは顧問先にもっと付加価値を提供できる事務所にしていきたい」という想いを強く持っていらっしゃいました。つまり、「記帳代行型の事務所からコンサルティング型の事務所へ」という方向転換です。
ただ、この変化を一人で進めるのは簡単ではありません。そこでA先生は、次のような考えを持たれました。「もし現在の税理士法人を維持できなかったとしても、同じ考えを持つ税理士と一緒に事務所を経営したい」つまり、価値観の合うパートナーを探したいというご相談でした。
そこで弊社では、コンサルティング志向の税理士の先生方をご紹介する形でパートナー探しをご支援しました。幸いにも、弊社が主催する実務セミナーなどには、「顧問先にもっと付加価値を提供したい」という考えを持つ税理士の先生方が多く参加されています。そのネットワークを活用し、6か月という限られた期間の中でも複数の候補者をご紹介することができました。面談を重ねた結果、最終的には価値観や事務所の方向性が一致する税理士事務所とパートナーを組むことになりました。
今回のケースでは、過去の税務リスクなどを整理する意味もあり、既存の税理士法人はいったん廃止し、翌日に新しい税理士法人を設立する方法を採用しました。新しい法人では出資割合を5対5とし、対等な立場で事務所経営を行う形となりました。結果として、A先生の事務所は単に存続しただけでなく、理想としていたコンサルティング型事務所への第一歩を踏み出すことになりました。
この事例からわかるのは、事務所の将来を考える際には「事務所を守る」という視点だけでなく、事務所をどう変えていくかという視点も重要だということです。
次の事例は、税理士1名とパート職員2名の個人事務所を運営されていたB先生からのご相談です。事務所規模としては決して大きくはありませんでしたが、少人数ながら売上は3,000万円以上あり、経営としては非常に安定していました。そのため、現状の事務所運営に大きな問題があったわけではありません。ただ、B先生が感じていたのは「将来への不安」でした。
近年、税理士法人が支店を増やしている地域では、
・税理士法人の看板による集客力
・人材採用のしやすさ
・組織としての営業力
といった面で、個人事務所との差が広がるケースもあります。
B先生も、「今は問題ないが、この先どうなるだろうか」という漠然とした不安を感じていらっしゃいました。また、B先生ご自身は小規模M&Aの支援など、コンサルティング業務に強みをお持ちでした。
そのため、「異なるジャンルの強みを持つ税理士と組めば、もっと面白い事務所になるのではないか」と考え、税理士法人化のパートナー探しをご依頼いただきました。
そこで弊社では、税理士向けメールマガジンを通じてノンネーム情報として情報配信を行いました。すると、配信から数日で5事務所以上からお問い合わせがありました。その後、複数の事務所との面談を行い、約半年ほどかけてお互いの事務所の方向性や価値観をすり合わせていきました。最終的には、B先生の専門領域とは異なる強みを持つ事務所とパートナーを組み、新しい税理士法人を設立することになりました。
この事例のポイントは、事務所を売却するのではなく、事務所を発展させるためのパートナー探しだったという点です。実際、多くのM&A仲介会社では、「税理士法人化のパートナーを探したい」と相談しても、事務所の譲渡案件でなければ対応してもらえないケースもあります。
しかし税理士業界では、共同経営・税理士法人化・業務提携といった形で事務所を発展させるケースも少なくありません。全国の税理士ネットワークを活用できる環境があれば、こうした選択肢も十分に現実的なものになります。
今回ご紹介した2つの事例には、いくつかの共通点があります。それは、どちらの先生も
「事務所をどう終えるか」ではなく「事務所をどう発展させるか」を考えていたという点です。
税理士事務所の将来を考える際、多くの場合は「一人で事務所を続ける」、「後継者を探す」、「引退する」といった選択肢が思い浮かびます。
しかし実際には、下記のような選択肢もあります。
特に近年は、採用難・業務の高度化・税理士法人の大型化といった環境変化もあり、一人で事務所を運営することの難しさを感じている先生も少なくありません。そのような中で、パートナーと組むという選択は、事務所の可能性を大きく広げることができます。
もちろん、パートナー探しは簡単ではありません。価値観や事務所の方向性が合わなければ、かえってうまくいかない可能性もあります。だからこそ、日頃から多くの税理士とつながるネットワークの存在が重要になります。
もし、「今のままで良いのだろうか」、「もう少し事務所を成長させたい」と感じている先生がいらっしゃれば、パートナーという選択肢について考えてみるのも一つかもしれません。税理士事務所の未来は、一つの形に決まっているわけではありません。選択肢を知ることが、事務所の可能性を広げる第一歩になるのです。





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