②譲渡先の選び方とは?~2人の出会いとカルチャーマッチ~
- 小杉 啓太
- 2 日前
- 読了時間: 8分
更新日:1 日前

~経営統合を実現した2人のリーダーが語る~
「実体験!ここだから話せる経営統合の裏話」
≪講師≫
●小西 慎太郎(こにし しんたろう)
DIG税理士法人/DIGグループ
(旧・税理士法人アーリークロス/合同会社アーリークロスグループ)
代表社員 公認会計士・税理士・宅地建物取引士
●仲田 芽衣(なかた めい)
なかた会計事務所 代表・税理士
株式会社Beso Co-founder / COO
≪ファシリテーター≫
●久保 憂希也(くぼ ゆきや)
元国税調査官
株式会社KACHIEL 代表取締役 CEO
2024年11月1日に発表されたDIG税理士法人(旧・税理士法人アーリークロス)と税理士法人Besoの経営統合について、実際に経営統合を実現した2人のリーダーが抱えていた不安や課題をどう乗り越えたのか、そしてどんな教訓を得たのかが語られる特別対談が2025年5月に実施されました。本記事では、その対談から「講師2人の出会いと譲渡先を選ぶ際のポイント」について抜粋してまとめました。
久保:
うーん、なるほど。
税理士法人Besoって、さっきのfreeeの導入支援とかもあったけど、
何が強みでそこまで伸びたの?
だって、3年で年商1億でしょ?
ウェブ広告がめちゃくちゃ強かった、みたいな感じ?
仲田先生:
いえ、そんなことはないんですよ。
実は地上戦もいろいろやっていて。
うちはWeWork(ウィーワーク)に入っていたので、
ほぼ毎日のようにセミナーをやって回っていました。
当時は補助金や融資制度がコロナの関係で整備され始めていたので、
誰よりも早く情報発信して、対応していました。
また、当時は「IT導入コンサル」みたいなことされている方がほとんどいなかったので、
ある意味“いいポジション”にいて、値決めもこちらでできていたんです。
一件で数百万円規模の導入支援をさせていただくような案件もあり、
一件の単価も高くなりましたし、金融機関からのご紹介も多くいただいたりしていました。
久保:
でも、28歳で独立して、33歳で設立から5年で税理士法人を売却したってことでしょ?
職員が10数名いれば、これを聞いている人はだいたい売上の見当ついちゃうよね。
仲田先生:
はい、そうですね(笑)
久保:
そんな短期間で売上が1億円超えるって、なかなかの話だと思うけど、どうなの?
仲田先生:
そうですね、独立した当時は「拡大こそすべてだ!」っていう勢いで、
誰よりも早く日本一を目指すぞって、気持ちでやっていました。
正直、昔は入れ替わりも激しかったですし、
ゴリゴリの体育会系みたいな感じで進めていたので、
私も主にプレイヤーとして動いていました。
だからこそ、売上が伸びていったというのはあるかと思います。
久保:
じゃあ、買った側である、DIG税理士法人としては、
大阪・奈良に新しく拠点を作るよりも、
M&Aのいい話があればウェルカムという考え方もある一方で、
M&Aの思惑として集客を引き継ぐという点についてはどのように考えていたの?
小西先生:
そうですね、ちょっと裏話になるんですけど、
実は大阪には、税理士法人Besoとの統合前からテスト的に支店を置いていたんです。
1人だけの支店ですが、先に動いていたというのもあり、
ある意味では“準備ができていた”という感じでした。
もちろん、仲田さんと白木さん(株式会社Besoの代表)の
人的ネットワークで取っているお仕事もあると思いますが、
事前に大阪に出ていたことで「まあ、なんとかなるだろう」と、
すんなり決まったようなところもあります。
久保:
じゃあ、税理士法人Besoの集客のノウハウをそのまま引き継いでいる、
というわけではないんですね。
小西先生:
そうですね。
もちろん、freeeさんとの関係とか、お付き合いのあった金融機関さんとの関係性は、
多少引き継がせてもらっています。
ただ、いわゆる“濃い人間関係”みたいな部分は、さすがに引き継いでいないですね。
久保:
うんうん。
それで、この2人、つまりこの2社の経営統合って、
M&Aの仲介会社でKACHIELが入っていたわけではなく、
2人で直接やったってことですよね。
じゃあちょっと、2人のつながりの話、聞いてもいいですか?
なんか“振り込め詐欺事件”みたいな話って聞いているんですけど(笑)
元々お互いに知っていたから、話を持ち込んだんですよね?
小西先生:
はい。
最初は株式会社Besoで開発しているサービスを紹介させてほしいということで、
共通の知り合いの税理士さんを通じて声をかけてもらったんです。
それで、最初に一度Webでお話させていただきました。
仲田先生:
そうですね。
小西先生:
その後、ちょっと経ってから……えっと、振り込んでくださいって(笑)
仲田先生:
いやいや、1個前にステップがありますよ!!!(笑)
久保:
出資してくださいってメール1本送ったんでしょ?
仲田先生:
はい、その前に一応、ちゃんと事情を説明するメールは送りました。
「担当直入に申し上げますが、こういう背景で、こういうことを考えているんですけど…」という内容のメールを。
久保:
いや、それって結局“振り込んでください”ってことでしょ(笑)
「うち(株式会社Beso)は上場を目指していて、税理士さんが使う業務管理ツールの開発をしていて~」
という流れで連絡したと思うんだけど、
リアルに会ったこともないのに、出資のお願いをしたんでしょ?(笑)
仲田先生:
はい、そうです。(笑)
小西先生:
結果、振り込みました。(笑)
久保:
うわぁ~、振り込んだ人もすごいと思うけど(笑)
仲田先生:
はい、出資していただきました(笑)
久保:
そういった2人の関係があったとのことですが、
そういう関係って別に1人だけじゃないですよね?
例えば、税理士さんのネットワークって、
正直、仲間うちとか飲み仲間とか、知り合いがたくさんいたわけですよね?
仲田先生:
はい、いました。
久保:
じゃあ、別にDIG税理士法人を選ばなくてもよかった可能性だってあったわけでしょ?
じゃあ、なんで選んだの?という話なんだけど。
小西先生:
やっぱり1番ちょろそうだった?(笑)
久保:
あ、そうか…メール1本でいけたって(笑)
仲田先生:
バレたかー(笑)
久保:
でも、売り手って“買い手”は選べますからね。
仲田先生:
はい、そうですね。
じゃあちょっと真面目な話に戻すと、
私自身は株式会社Besoにコミットするという目的があるなかで
従業員を引き継いでもらう、奈良の拠点も引き継いでもらうという前提があるなかで、
どこが一番マッチしそうかと、結構リアルに考えて、
社風とか、メンバーの雰囲気、代表の人柄や部長陣の感じなど、
ふんわりしていますが、そういうカルチャーの部分はかなり意識しました。
当時、DIG税理士法人は「九州No.1を目指す」というのを掲げていらっしゃって、
私たちはfreee専門でやっていたので、
そういう価値観を共有できそうなところ、freee専門の税理士法人という存在を、
ちゃんと価値あるものとして見てくれるところはどこか?と考えた結果、
マネーフォワードに強いDIG税理士法人と一緒になったら、
更に伸びるのではないかと声をかけさせていただきました。
久保:
たしかに、freee専門の税理士法人って言われると、逆に狭く見えるかもね。
嫌だと思われるというか、
「色が付きすぎて難しい」って判断されることもあるかもしれないなと。
あと、従業員のカルチャーって確かに難しいよね。
仲田先生:
はい。
年齢層もそうですけど、うちはほとんどがリモート勤務だったので、
リモートに対応できるかどうか、あとはコミュニケーションが円滑にできそうか。
なんというか、語弊があるかもしれませんけど、
“陽キャっぽいか”とか、話しやすそうな雰囲気かどうかみたいなところも含めて、
結構考えました。
久保:
なるほどね。
それで、そんな話を振られた小西くんは、最初どういう反応だったの?
小西先生:
そうですね、最初チャットをもらったんですよ。
「ちょっと相談したいことがあって」みたいな。
久保:
直筆の手紙送れよ!なんでチャットなんだよ(笑)
小西先生:
ただ、正直その時点で、
「もしかしてこれM&Aの相談じゃないかな?」って、
なんとなくピンときていました。
久保:
最初はM&Aって言ってなかったんですよね?
小西先生:
はい。
最初は「事務所のことについて相談したい」っていう内容でした。
でも、株式会社Besoのことも株主として見ていたし、いろんな状況も把握していたので。
「たぶんこれはM&Aの話だろうな」と思って、
翌週には「じゃあ僕、大阪行きます」ってなって、会いに行きました。
仲田先生:
はい、そうでしたね。
久保:
じゃあ逆の立場からすると、
まぁ、デューデリジェンスとかそういう細かい話はさておき、
さっき話に出ていたカルチャーのフィットであったり、
freee専門とか、職員さんは基本リモートとか、
そういうリアルな話を聞いたとき、買い手としてどう思ったんですか?
小西先生:
うちとしては、むしろすごくウェルカムでしたね。
本当に近い部分が多くて、非常にやりやすいと感じました。
むしろ「うち以外の買い手って、逆にあまりいいとこないんじゃないかな」
と思ったくらいで、すごくフィットしているなと。
久保:
うんうん。
まぁ、確かにそうなるよね。
「freee専門で、かつリモートベースでやってます」って言われると、
逆に難しい部分もあるもんね。
仲田先生:
ですよね。
しかも、私がいなくなることが前提だったので、
代表がいなくなる前提で統合していただくってなると、
人数がある程度いないと厳しいだろうなって私も思っていました。
なので、受け入れてもらえたことは、本当にありがたかったです。
次回は「職員への経営統合の案内時の反応と制度変更への対応方法」について抜粋して記事にまとめます。(2025年7月18日に記事アップ予定)
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