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③経営統合を職員に伝えた時の反応は?~譲渡側の職員への案内と制度変更への対応方法~

  • 執筆者の写真: 小杉 啓太
    小杉 啓太
  • 7月18日
  • 読了時間: 8分

更新日:8月1日


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~経営統合を実現した2人のリーダーが語る~

「実体験!ここだから話せる経営統合の裏話」

≪講師≫

●小西 慎太郎(こにし しんたろう)

 DIG税理士法人/DIGグループ

 (旧・税理士法人アーリークロス/合同会社アーリークロスグループ)

 代表社員 公認会計士・税理士・宅地建物取引士


●仲田 芽衣(なかた めい)

 なかた会計事務所 代表・税理士

 株式会社Beso Co-founder / COO


≪ファシリテーター≫

●久保 憂希也(くぼ ゆきや)

 元国税調査官

 株式会社KACHIEL 代表取締役 CEO



2024年11月1日に発表されたDIG税理士法人(旧・税理士法人アーリークロス)と税理士法人Besoの経営統合について、実際に経営統合を実現した2人のリーダーが抱えていた不安や課題をどう乗り越えたのか、そしてどんな教訓を得たのかが語られる特別対談が2025年5月に実施されました。本記事では、その対談から職員への経営統合の案内時の反応と制度変更への対応方法」について抜粋してまとめました。


<他の記事は下記をクリックで確認できます!>



久保:

普通のM&Aって言っちゃダメだけど、一般的な税理士事務所のM&Aの場合って、

いわゆる“ロックアップ期間”があるよね、だいたい2〜3年くらい。

売り手の希望や事情によって違うけど。


小西先生:

そうですね。


久保:

ロックアップを設定する理由って、やっぱりマネジメントの問題とか、

顧問先の残存率、つまり引き継ぎのため。

だから、ロックアップ期間を短くても2年、長いと3年って人もいる。

そんな中で、「統合の瞬間に私いなくなります」という話だったわけですよね?


小西先生:

はい、そうですね。


久保:

それって結構ハードランディングだよね。


小西先生:

そうですね。

ただ、さっき仲田さんが「リーダーシップがうまく取れなかった」

と言っていましたけど、実際にはしっかり権限が委譲されていて、

スタッフの方やもう一人の税理士の方もいらっしゃるので、

業務はちゃんと自走している状態であることが見ていてわかり、

「これは心配いらないな」と思えました。


久保:

じゃあ、今から振り返ってみて、半年前に感じていた心配って何かありましたか?


小西先生:

うーん、一番心配だったのはやっぱり

「従業員の皆さんがうちに来たいと思ってくれるかどうか」

というところですね。


たとえば、「仲田さんと一緒に働きたいからここにいた」って人が多くて、

「仲田さんが抜けるなら私も辞めます」みたいな流れになると、

ちょっとM&Aとしては買えないなと思っていました。


久保:

まぁ、そこはM&Aの実務的には一番センシティブ且つクリティカルな問題だよね。

なぜなら、職員には事前に言えないから。

売り手の所長も、早い段階で「実は売るんです」なんて言うわけではない。

事業譲渡だったら個別同意が必要になるけど、それでも早くて2ヶ月前とかだよね。

それで、今回は職員さんには何ヶ月前に伝えたの?


仲田先生:

1ヶ月前です、うちは。


久保:

その1ヶ月前に伝えたとき、反応はどうでした?


仲田先生:

これちょっと、喜んでいいのか悲しいのか、複雑だったんですけど。

言った瞬間、「えっ、そうなんですか。いつからですか?」

みたいな、すごくあっさりした反応で、経営統合的にはよかったと思うんですけど…。


良い意味で言えば、業務は回っていた状態だったし、

私も長く株式会社Besoのほうにコミットしていたので、

もう現場は自走していたというか、私以外に1人管理者がいて

“1人の管理者がいれば回る”みたいな仕組みになっていたのは事実だったんですけど。

それでも、「え?悲しくないの?私いなくなるんだよ?」

という気持ちは正直ありました(笑)


久保:

「あなたがいなくなるなら私も…」みたいなこともありそうだけど、

そんなにあっさりなの?という感じだね。(笑)


仲田先生:

ある従業員からは

「これはベストな選択だと思います」

と言われて、ちょっとグッときましたね。


久保:

ああ、それは刺さるな…。グッとくるな…。


仲田先生:

はい。

でも、福岡に行って喜んで働いてくれているメンバーもいたりして、

私としては「後ろ髪を引かれることなく送り出せた」感覚はあり、いい形だと思いました。


小西先生:

ちょっと補足すると、奈良には玉置さんという税理士のメンバーがいるんですけど、

彼は社員税理士で、事前の意思決定の段階から話に入ってくれていました。

玉置さんは、奈良という地域性もあるなかで、

「自分たちだけでやっていくのはちょっと難しい」と彼も思っていたようで、

「だからこそ税理士法人を作ったし、今回DIG税理士法人と一緒になることにも前向きだ」と言ってくれていたんですよね。

それが僕としては、すごく安心材料でした。

おそらく大阪のメンバーも奈良のメンバーも、

玉置さんが残るっていう安心感が大きかったんじゃないかと思います。


久保:

でも、創業者がサッといなくなるわけでしょ?

それを「権限移譲が進んでいた」と捉えるか、

「リーダーシップが足りなかった」と捉えるかは、人によって違いそうだけど。


仲田先生:

そうですね。


久保:

人の問題っていちばんセンシティブだから、自分(KACHIEL)が仲介をしていても、

人で苦労している事務所が圧倒的に多いんです。

職員さんって、どうしても顧問先に紐づいているじゃない?

だから、その職員が辞める=顧問先が流出する——このパターンがつらい。

PMI(統合プロセス)がうまくいかない典型例だよね。

それがなく、ハレーションが少ないのであれば、そこは成功したパターンなのかな。


仲田先生:

私のネガティブな話もありましたけど、

一番効果的だったのはDIG税理士法人の皆さんが何度も大阪に来てくださったことです。


統合のタイミングだけでなく、私や玉置(奈良の社員税理士)、

白木(株式会社Besoの代表)が行くタイミングにもサプライズで来てくれたり、

引き継いでくださる従業員の給与や人事制度の部分を手厚くしてくれたり、

人事の組織がしっかりとDIG税理士法人にあったのはやはり大きかったですね。


久保:

このあと裏話だからリアルに聞きたいんだけど、

経営統合やM&Aで非常に難しいのが、同じ組織、税理士法人になってしまうと、

給与テーブルがマッチしないケースってよくあるよね。


株式会社同士の買収なら子会社になるから、

就業規則も給与体系も別で維持できるけど、合併形式だと全部一緒にせざるを得ない。


たとえば「リモートNG」とか「給与水準が合わない」とか、

制度面のギャップはどう調整したの?

DIG税理士法人が折れたの?


小西先生:

「折れた」というほどのことはほとんど無かったですね。


まず給与水準が下がった人は一人もいませんし、

リモートワークに関しても、うちのルールより幅広く認める形でしたが、

拠点ごとの運用ルールとしてそのまま残しました。

その他条件面についても極端に乖離している人もいなかったので、

ほとんど問題になりませんでした。


ただ、最初に気をつけたのは「評価制度」です。

元・税理士法人Beso側は人数も少なかったので、

かなり“ふわっと”決めていたのですが、

うちは半期ごとにパフォーマンス評価と等級があります。

評価が明確になること自体が「嫌だ」という人もいるかもしれないので、

運用を始めていいかどうかは丁寧に話しました。


「うまくいけば今より上がることもあるし、場合によっては下がることもある」

と現実を説明しつつ、実際の分布や例を共有して、

「無茶な目標設定はしないよ」というのを説明し、納得してもらったうえで、

次の上期から導入する、という段階的な移行にしたんです。


久保:

いきなり今の評価制度に乗せず、移行期間を置いたと。

「DIGループの評価制度に載せるのはここからですよ、ただしこの期間はまだ載せません」という形で職員さんと話をしたと。


小西先生:

そこがいちばん気を遣いました、評価制度が嫌で辞めちゃうこともあり得ますし。

でも皆さん前向きで、「ぜひやってみたい」「全然大丈夫です」

と言ってくれたので、本当に助かりました。


久保:

それは仲田さん側からすると、感情的にはちょっと複雑?


仲田先生:

いや、全然、複雑じゃないですよ(笑)


久保:

職員さんの待遇が良くなるなら、所長としてはありがたい話だしね。

やっぱり大手っていうか、DIG税理士法人に入った方が

待遇面では良いのかもしれないけど、

複雑じゃないけど所長としては寂しい気持ちとかはなかったの?


仲田先生:

うーん、これ本当に強がりじゃなくて、

職員に言ったタイミングで「えっ」と一瞬だけ思ったくらいで、

それ以降は「良かったな」という気持ちの方が大きかったですね。


実は、みんなに対して「申し訳ないな」と思っていた部分も大きくて。

もし、私が税理士法人の方にフルコミットできていたら、

もっと業績も上げられたし、みんなのモチベーションも上げられるのにと思いつつ、

コミットできないことに2年くらいずっと悩んでいたんです。

だから、今回の統合は「ありがたい」という気持ちの方が強いです。



次回は「譲渡実行までのスケジュールとPMI(統合プロセス)の進め方、そして譲受側目線でのM&Aの考え方」について抜粋して記事にまとめます。(2025年7月28日に記事公開予定)



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KACHIELは税理士向け実務セミナー事業を15年以上運営し、全国に2.3万人以上の税理士ネットワークをもつ会社です。弊社をご利用頂く税理士事務所所長・税理士法人代表であるお客様などから年間50件以上、事務所承継や組織化のご相談を頂いております。

単なる「売却」に限らず、譲渡側の所長の現役続行を前提とした「支店成り」「税理士法人化」「税理士法人合併」などのご支援を全国で多く行っています。

​これまで弊社ご支援先ではM&Aを原因とした職員様の離脱が過去通算0人です。

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代表取締役 久保 憂希也

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設立  2009年2月

資本金 888,500,000円(資本剰余金含む)

MAIL mainfo@kachiel.jp 

TEL   03-5422-6166(平日 9:00~18:00)

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