④譲渡実行までに大変だったことは?~譲渡実行までのスケジュールとPMI(統合プロセス)の進め方~
- 小杉 啓太

- 7月28日
- 読了時間: 8分
更新日:8月1日

~経営統合を実現した2人のリーダーが語る~
「実体験!ここだから話せる経営統合の裏話」
≪講師≫
●小西 慎太郎(こにし しんたろう)
DIG税理士法人/DIGグループ
(旧・税理士法人アーリークロス/合同会社アーリークロスグループ)
代表社員 公認会計士・税理士・宅地建物取引士
●仲田 芽衣(なかた めい)
なかた会計事務所 代表・税理士
株式会社Beso Co-founder / COO
≪ファシリテーター≫
●久保 憂希也(くぼ ゆきや)
元国税調査官
株式会社KACHIEL 代表取締役 CEO
2024年11月1日に発表されたDIG税理士法人(旧・税理士法人アーリークロス)と税理士法人Besoの経営統合について、実際に経営統合を実現した2人のリーダーが抱えていた不安や課題をどう乗り越えたのか、そしてどんな教訓を得たのかが語られる特別対談が2025年5月に実施されました。
本記事では、その対談から「譲渡実行までのスケジュールとPMI(統合プロセス)の進め方、そして譲受側目線でのM&Aの考え方」について抜粋してまとめました。
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久保:
なるほど。
これまで聞いてきたM&Aの中でも
最短スケジ+ュールでM&Aが成立しているパターンだと思うんだよね。
だって、昨年(2024年)11月1日に経営統合していて、
話が始まったのがその数ヶ月前の夏でしょ? つまり3〜4ヶ月。
小西先生:
そうですね、3〜4ヶ月ですね。
久保:
3〜4ヶ月って短いでしょ。
小西くんとしてはありだったの?
時間をかけたからいいってもんじゃないでしょ、という考えだったの?
小西先生:
はい。
個人的には全然問題なかったですね。
もちろん、事前説明はしっかりする必要がありますけど、
逆に長引かせるほうが良くないと僕は思います。
久保:
なるほどね、たしかにね。
1年協議したからうまくいくって話でもないし、お互いの精度が上がるわけでもないしね。
小西先生:
そうですね。
今回は人事制度や給与テーブルで大きな差があったわけでもないですし、
だったらもう早く進めた方が良いという判断でした。
久保:
実質、チャット送ってから3ヶ月で統合ってことだよね?
小西先生・仲田先生:
そうですね。(笑)
久保:
その割には2人とも他人事みたいな顔してるけど(笑)
8月にチャット送って、11月に統合なので、3ヶ月ですけど。
仲田先生:
いや、当時は本当にタスクが多くて、あまり時間感覚がなかったです(笑)
「え、3ヶ月だったんだ」って今思えば短かったですね。
でも密にコミュニケーションを取らせてもらっていたので、濃い3ヶ月でした。
久保:
密になる分、めちゃめちゃ大変だったんじゃない? スケジュールとか。
小西先生:
そうですね、現場のメンバーはかなり大変だったと思います。
ただ、懸念事項で先程話に出た部分、特に人とか文化的な部分が合うかどうか、
それさえクリアになった後は、あとは事務手続きって感じでしたね。
久保:
仲田さんとは反応が全然違うけど、仲田さんとしてはどういうところが大変だったの?
仲田先生:
DIGグループは部署がたくさんあるので、私は1対n(複数人)の関係だったんですよ。
全部の部署に説明したり、コミュニケーションを取ったりが大変でしたね。
久保:
たしかに、小西くんとだけ話してるわけじゃないもんね。
小西先生:
私から「この方針で進めます」「人事のPMIはこうしてください」
と各部門長にお願いして、それぞれで調整してもらうっていうスタイルでした。
久保:
なるほど、たしかにそれは大変だ。
仲田先生:
バックオフィスも私が担当していたので、
人事もあれもこれもと全部私と紐づいていて、かなりのハードモードでした。
久保:
それぞれ違う部署の人が話してくるから、それを全部対応しなきゃいけないと。
小西先生:
たしかに。
経理から人事から業務部からと、毎日色々な人とやり取りしていましたね(笑)
仲田先生:
そうですね、チャットワークが凄いことになっていました(笑)
久保:
それ、かなり疲弊したでしょ?
仲田先生:
はい(笑)
PMI(統合プロセス)の期間も、縦割りの各グループと
しっかりコミュニケーションを取る必要があったし、
チームメンバーとも誤解がないように丁寧にコミュニケーションを取っていたので、
PMI(統合プロセス)の期間も含めて半年くらいはバタバタしていましたね。
久保:
その3ヶ月でのM&A成立って、小西くんは聞いていたの?
そんなに時間がないことを。
小西先生:
ああ、どうだったかな…?
仲田先生:
でも、まあ、「なる早で」って感じではありましたね(笑)
久保:
いや、なる早って税理士として使っちゃいけない言葉だから(笑)
仲田先生:
すいません(笑)
久保:
でも、なる早が3ヶ月だったっていうだけなんですね。
仲田先生:
そうですね。
ちょうど繁忙期が11月後半くらいからなので、
繫忙期の前にという話になっていて、だったらこのタイミングしかないよね、
という感じでした。
久保:
うん、たしかに。
うち(KACHIEL)もM&Aの仲介やっていて思うけど、
税理士業界のM&Aって成立時期が限られているよね。
例えば1月〜3月に経営統合する人って、確定申告の時期でまずいない。
だからどうしても7月1日とか、秋の10月・11月・12月ってところに集中しちゃう。
税理士業界は繁忙期がかたまってしまうので、
話をする期間が難しいとM&Aの仲介をやっていて感じるよね。
ちょっと話が長引くだけで
「すいません、確定申告があるんで半年後に」ってなっちゃうし。
時期とかはすごい大変で、うち(KACHIEL)でやっているM&Aの仲介で
平均所要期間とか取っているわけではないけど、一般論でいうと1年くらいなんじゃない?
ただ1年間ずっと話しているわけではなく、
繁忙期とかは除いてしまっているので実質的には半年間くらいの所要期間なので、
3ヶ月は聞いたことがないね。
小西先生:
うちは毎年5月が決算なんですけど、
そのときに社内で来期の計画を共有するタイミングがあって、
ちょうど去年(2024年)の5月に
「今後はアライアンスやM&Aも積極的にやっていこう」って話をしていたんです。
それで、そのすぐ後に仲田さんから声がかかったので、
ある意味準備ができていました。
だから、すんなり進められたっていう背景もあります。
久保:
なるほど、なるほど。
じゃあ、DIGグループとしては
今後もM&Aは成長戦略のひとつとして考えているってこと?
小西先生:
はい、もちろんです。
ただ、カルチャーや相性があるので、どこでもいいとは思っていません。
でも、共に成長していけそうなパートナーであれば、ぜひ積極的にやっていきたいです。
久保:
地域とかによらず?
小西先生:
「残ってくれる税理士がいる」ならどこでもいいんですが、
「税理士が抜ける」ってケースになると、
やっぱり税理士が採用できるか、うちが税理士を派遣できるエリアに限られるかなと。
久保:
うん、エリアはほんとに難しいよね。
自分たちが出せない地域の事務所を買いたいのに、手を出したくても出せない。
そこは本当にM&Aをやっている買い手の多くの人がぶつかるジレンマだよね。
逆に、近すぎると今度は商圏が重複して意味が薄れるとか。
それで、仲田さんは大阪・奈良の事務所だったけど、
売却先は関西圏の事務所にしたいとは考えてなかったの?
仲田先生:
実はエリアは最初そんなに重視していなかったです。
それよりも優先度としては、自分が抜けること、
カルチャーの相性などの条件が合うかを重視していました。
関西圏の事務所も候補には入らなかったわけではないですが、
条件に合わなかったという感じですね。
久保:
なるほど。
仲介とかを入れているわけではないので、結局、直接知っているところか、
知人を通じて知っているところに声をかけるしかないって感じだもんね。
選択肢は限られるよね?
仲田先生:
はい、そうですね。
久保:
いや、それがすごいなと思うけどね。
自分でアタックかけて動いちゃうって。
仲田先生:
そうですね、私自身が珍しくて、多分けっこう行動するタイプなんですよね。
決めたら即動くっていう感じだからこそ、
普通のパターンではないと思っています、自分でも。
久保:
でも、知り合いに声かけるって、この手の話だと逆に言いにくいっていうのはあるよね?
仲田先生:
ああ、それはあんまりなかったですね。
それより「もうやる」って気持ちの方が強かったんで、
恥ずかしいとか言いにくいとか、そういう感覚は一切なかったです。
次回は「知り合い同士でのM&Aの相談可否、譲渡側・譲受側それぞれがM&Aで大切にしていることや譲受側の引き継ぎ対応」について抜粋して記事にまとめます。
(2025年7月29日に記事公開予定)


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