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④退職時の提出書類~職員の独立を防ぐ就業規則の作り方~

  • 執筆者の写真: 大竹 邦明
    大竹 邦明
  • 5月29日
  • 読了時間: 5分

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税理士事務所 所長向けに「職員の独立を防ぐ就業規則の作り方~5つのポイント~」座談会を開催しました。(2022年10月開催)

本記事では4つ目「退職時の提出書類」について抜粋して記事にまとめました。

講師      :社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ 代表社員 竹谷 保宣

ファシリテーター:株式会社KACHIEL 大竹 邦明


大竹:

では、ポイント4つ目の「退職時」についてお話を進めていきます。


退職時の提出書類、守秘義務、損害賠償といったテーマについて詳しく伺いたいと思います。


竹谷:

はい。まず、誓約書についてですが、これは入職時にも提出してもらいますよね。また、就業規則にも誓約書を提出することを明記しておきます。そして、退職時にも再度誓約書を提出してもらう、つまり合計3回取得するのが理想的です。


しかし、退職時に後ろめたい思いがある方や、同業他社へ転職する方などは、誓約書の提出を拒否するケースもあります。そのため、入社時と就業規則での取り決めの2つをしっかり整備し、退職時の誓約書が提出されなかった場合でもカバーできるようにしておくことが重要です。


大竹:

なるほど。では、退職時に誓約書を提出しない場合に、何かペナルティを科すことは可能なのでしょうか?


竹谷:

はい。例えば、退職時の誓約書を提出しない場合で合理的な理由がない場合は、退職金の減額を検討することも可能です。実際、この点を就業規則に明記している事務所もあります。


また、法律的な裏付けとして、民法第514条では業務上の秘密を守る義務が定められています。これには、

- クライアントから知り得た相談内容や依頼内容

- 税務申告作成のために預かった情報

なども含まれるため、これらを持ち出すことは税理士法違反に該当します。


大竹:

なるほど、税理士法違反となることで、より強い抑止力を持たせることができますね。


竹谷:

はい。そして、損害賠償の話ですが、損害賠償の予定(あらかじめ賠償額を定めること)は法律上できません。しかし、実際に損害が発生した場合は、実損額を請求することが可能です。


具体的には、退職後6か月程度の間に、持ち出されたクライアントの顧問料などを算出し、それを損害賠償請求の対象とするイメージになります。退職直後ではなく、ある程度の期間を経た上で判断することが重要です。


大竹:

なるほど。競業避止義務についてはいかがでしょうか?


竹谷:

職業選択の自由が憲法で保障されているため、法的に強制することは難しいですが、代替措置として、競業避止義務を守ってもらう代わりに一定の金銭補償を支払うといった方法があります。完全に防ぐことは難しいですが、ある程度の抑止力にはなります。


大竹:

引き抜き行為については、どのように対応すればよいでしょうか?


竹谷:

引き抜かれる側の人には職業選択の自由がありますので、「辞めてはいけない」と強制することはできません。


しかし、過度な引き抜きや悪質な引き抜きによって損害が発生した場合、損害賠償を請求することは可能です。


例えば、「ラクソン事件」という判例があります。これは、役職者がその影響力を利用して大量の職員を引き抜いたケースで、裁判所が違法と判断し損害賠償請求を認めました。このように、悪質な引き抜きに対しては法的措置を取ることができます。


大竹:

確かに、損害賠償を請求できる可能性があるというのは大きなポイントですね。


竹谷:

はい。もちろん、100%の損害賠償を回収することは難しいですが、事務所が適切な規則を整備し、職員にルールを周知し、日々の管理を行っていることを証明できれば、違法な引き抜きに対する対応がしやすくなります。


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大竹:

次に、貸与物や所属物の返還についてですが、特にどのような点を注意すべきでしょうか?


竹谷:

特に名刺の回収が重要です。


ロッカーの鍵や事務所の備品は比較的容易に回収できますが、名刺を適切に回収できていない事務所も少なくありません。


さらに、事務所支給の携帯電話を職員に渡している場合、その携帯に登録されている顧客情報も適切に管理する必要があります。


例えば、職員が個人の携帯に顧客情報を登録してしまうと、退職後にそのまま持ち出されてしまうリスクがあります。そのため、

- 退職時に携帯の顧客データを消去することを義務付ける

- 個人端末での顧客データの管理を禁止する

などの対応を取ることが望ましいです。


大竹:

竹谷先生の事務所では、どのようにチェックされていますか?


竹谷:

当事務所では、携帯電話は事務所支給とし、顧客情報の登録を管理しています。退職時には、

- 名刺の回収

- 携帯電話の返却

- 事務所支給の携帯に登録されたデータの確認

を徹底しています。


大竹:

徹底的に管理されているのですね。



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大竹:

次に、「退職金は3ヶ月以内に支給」とありますが、これはどういった理由でしょうか?


竹谷:

これは経験則によるものですが、退職後に職員の在職中の不正が発覚するケースがあるためです。


例えば、

- クライアントを持ち出していた

- 事務所のデータを無断でコピーしていた

といった問題が、退職後1ヶ月ほど経過してから発覚することが多いのです。


ところが、退職金をすぐに支払ってしまうと、後から不正が発覚しても返還請求が非常に難しくなります。特に連絡が取れなくなるケースもあるため、退職金の支払いを退職後3ヶ月程度に遅らせることで、そうしたリスクを軽減できます。


大竹:

なるほど。3ヶ月という期間なら、法的にも問題はないのでしょうか?


竹谷:

はい。退職金の支払いについては、法律上「必ずいつまでに払うべき」との規定はありません


ただし、あまりに遅らせると社会通念上問題になるため、3ヶ月程度が適切な範囲と考えています。


大竹:

ありがとうございます。では、次のポイントに進みましょう。



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