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①採用面接時:面接時の提出書類と確認ポイント~職員の独立を防ぐ就業規則の作り方~

  • 執筆者の写真: 大竹 邦明
    大竹 邦明
  • 5月26日
  • 読了時間: 14分

税理士事務所 所長向けに「職員の独立を防ぐ就業規則の作り方~5つのポイント~」座談会を開催しました。(2022年10月開催)

本記事では1つ目「採用面接時のポイント」について抜粋して記事にまとめました。

講師      :社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ 代表社員 竹谷 保宣

ファシリテーター:株式会社KACHIEL 大竹 邦明


大竹:

はい、それでは定刻となりましたので、始めさせていただきます。KACHIELの大竹でございます。よろしくお願いいたします。


竹谷:

ベストパートナーズの竹谷でございます。よろしくお願いします。


大竹:

本日は座談会企画の2回目という形で開催させていただきます。今日のテーマは「職員の独立を防ぐ就業規則の作り方 5つのポイント」です。

先ほどご紹介したとおり、ベストパートナーズの竹谷先生、社会保険労務士の先生にお話をいただきます。




さて、なぜこのテーマを選んだのかというと、前回の座談会のアンケートでリクエストをいただいたためです。また、私自身もこれまで採用支援や事務所のアウトソーシングに関する相談をいただく中で、特に「職員の独立」が事務所経営の大きな課題として挙げられていました。そういった背景から、このテーマについて詳しくお話しいただくために、経験豊富な竹谷先生をお招きしました。


では、早速竹谷先生のプロフィールをご紹介いたします。


竹谷:

はい、ありがとうございます。私、竹谷康信は社会保険労務士法人ベストパートナーズの代表社員を務めております。1990年に開業し、現在、大阪と東京に拠点を構えております。

大阪の事務所は北区にあり、最寄り駅から徒歩10分ほど。東京の事務所は茅場町にございます。

現在、事務所の職員数は23名で、年内にさらに2名の増員を予定しています。また、社会保険労務士の資格者は9名在籍しており、試験勉強中のスタッフも複数名おります。今年の試験を受けた方が合格すれば、さらに増える予定です。



大竹:

9名の社労士がいるのは、かなり多い方ですよね?


竹谷:

そうですね。ただ、上には上がいますので、まだまだですね。


大竹:

これまでに1000件以上の就業規則の相談対応、1200件以上の労働基準監督署の是正勧告対応をされてきたとのことですが、これほどの案件を対応するのは大変ではないですか?


竹谷:

そうですね。うちの事務所の成り立ちとして、相談業務が非常に多く、そのほとんどが労務トラブルに関するものでした。結果として、労働基準監督署の調査対応が増えていったという流れですね。


大竹:

さらに、労務デューデリジェンス(労務DD)の業務も行われているとのことですが、どのような企業が多いのでしょうか?


竹谷:

主に2つのパターンがあります。一つは、上場を目指している企業からの依頼。もう一つは、M&Aに際して相手先の企業の労務状況をチェックしてほしいというケースです。最近では、事業承継に関する相談も増えており、特に親子間での事業承継時に「父親のやり方のままでよいのか?」といった法的なチェックを依頼されることが多くなっています。


大竹:

今回のテーマである「職員の独立問題」についても、多くのご相談を受けているとのことですが、具体的にはどのようなケースが多いのでしょうか?


竹谷:

税理士事務所の方々から、「職員が独立して顧客を持っていってしまう」という相談が非常に多いですね。規模でいうと、10名~70名規模の税理士事務所や税理士法人、さらには同業の社労士法人からの相談もあります。


大竹:

やはり、税理士事務所や社労士法人の所長の先生方にとって、職員の独立は大きな悩みですよね。


竹谷:

そうですね。何年もかけて育てた職員が独立し、顧客を連れて行ってしまうケースは珍しくありません。これによって事務所の経営に大きなダメージが出ます。この問題を解決するため、就業規則の作成時には、リスクヘッジの視点を入れています。


大竹:

本日は、この課題に対する具体的な解決策についてお話しいただきますので、ぜひ最後までご覧ください。


では、本題に入っていきます。本日の内容は5つのポイントに分けて解説していきます。


竹谷:

はい。今回は、「採用面接時」「採用時」「在職時」「退職時」「退職後」の5段階に分けて解説します。



大竹:

この5つのポイントは、すべて就業規則に記載されるものですか?


竹谷:

厳密には、就業規則は在職中の職員に適用されるものなので、採用時から退職時までの範囲になります。ただ、我々が就業規則を作成する際には、採用面接時の提出書類や、退職後の行動制限も含めることがあります。ですので、広い意味で就業規則に含めると考えていただければよいかと思います。


大竹:

ありがとうございます。それでは、この後、ポイント1から順番に解説をお願いいたします。


竹谷:

では、ポイント1つ目に入ります。






採用面接時:面接時の提出書類と確認ポイント



大竹:

まず、採用面接時の提出書類について、3つの書類が挙げられていますが、それぞれのポイントとなる大枠の意味合いについてお伺いしたいと思います。


竹谷:

はい。採用面接では、何を聞くか、どういったポイントを見極めるかが重要になります。面接での失敗は避けたいので、できる限りその人のキャラクターや、提出された履歴書から過去の経歴をしっかりと理解することが大切です。


大竹:

ありがとうございます。それでは、3つの書類について深掘りしていきます。



1. 履歴書のチェックポイント



大竹:

履歴書を見る際のポイントとして、「空白期間を読む」という点が挙げられていますが、

これはどのような意味でしょうか?


竹谷:

まず、履歴書を提出してもらいますが、転職経験がある方が多いかと思います。その際に、転職と転職の間の「空白期間」がどれくらいあるかを確認します。

我々の経験上、空白期間が3ヶ月以上ある場合、何かしらの問題を抱えている可能性があります。


大竹:

なるほど。その「問題」とは、具体的にどのようなケースが考えられますか?


竹谷:

代表的なケースとしては、

- メンタルヘルス不全による長期休職

- 経歴詐称

が挙げられます。


このようなリスクを見極めるためにも、空白期間がある場合は、面接時に理由をしっかりと確認する必要があります。


大竹:

なるほど。御社では、年間の応募者数が多いと聞いていますが、履歴書の審査はどのように行われていますか?


竹谷:

弊社では、毎年300名以上の応募があります。そのうち、実際に面接を行うのは約10%の30名程度です。


履歴書を確認する際には、特に以下の4つのポイントをチェックします。



履歴書の4つのチェックポイント


1. 転職回数

- 転職回数が少ない方が好ましい。

- 年齢にもよるが、目安としては3回以内。


2. 在職期間

- 1年以上勤務しているかを確認。

- 1年未満の職歴が多い場合は注意が必要。


3. 転職理由

- 面接時に直接確認するが、履歴書にも合理的な理由が記載されているか。

- 「人間関係が理由」と書かれている場合は特に注意が必要。


4. 転職の一貫性

- 業種や職種に一貫性があるかを確認。

- 例:税理士事務所 → 一般企業 → 税理士事務所 → 一般企業、のようにブレがある場合は注意。



大竹:

なるほど。これらのポイントをしっかり確認することで、適切な人材を見極めることができますね。


ちなみに、「生活が苦しくて転職を繰り返している」といったケースについては、どのように判断されますか?


竹谷:

採用の目的は、事務所で最大限パフォーマンスを発揮してもらうことです。「生活が苦しい」という理由だけで採用を決めるのではなく、応募者が本当に活躍できる人材かどうかを見極めることが重要です。


大竹:

ありがとうございます。弊社でも「ジョブホッパー(短期間で転職を繰り返す人)」を不採用基準の一つにしています。


特に会計業界では、ベテラン層のジョブホッパーは、看護師のように職場を転々とするケースと似た特徴があるように感じます。


竹谷:

そうですね。転職理由が「より良い条件を求めて」というケースもありますが、その場合でも一貫性があるかどうかを確認することが重要です。


大竹:

以上が履歴書のチェックポイントでした。

では、次に2つ目の書類についてお話を進めていきます。



「職務経歴書」ですね。ここでは、過去の転職理由や、自分についてきてくれたクライアントの有無を確認するということですが、これはどのような意味になるのでしょうか?


竹谷:

はい。職員の方によっては、前職の顧問先をそのまま持って次の事務所に移るケースがあります。こうしたことについては、事前にしっかり確認しておく必要があります。もし確認をせずに進めてしまうと、トラブルになる可能性もあるんです。

そのため、クライアントについても、転職時にしっかりと話し合い、移籍先の事務所の方針やルールに従うことが重要です。事務所ごとに業務のやり方が異なるため、前のやり方をそのまま続けると問題が発生することがあります。ですので、その点をしっかり確認する必要があるということですね。


大竹:

お客様を連れてきてもらわない方が望ましいということですか?


竹谷:

いや、そういうわけではありません。連れてくること自体は問題ないのですが、新しい事務所の方針に従い、しっかりと説明を行い、クライアントにも納得してもらう必要があります。でないと、後々トラブルになってしまうこともあるんですね。


例えば、料金の違いが原因で「前の事務所と同じ料金体系でないと困る」といったズレが生じることがあります。そうしたケースにおいて、どこまで新しい事務所で許容できるかを考慮する必要があります。


大竹:

ありがとうございます。今日のテーマは「独立を防ぐため」ということですが、お客様を転職先に連れて来てくれること自体は歓迎するけれど、条件は新しい事務所のルールに従うという形でしょうか?


竹谷:

そうですね。新しい事務所のルールや制度に従ってもらうことが大前提です。例えば、私たちの事務所では、クライアントと契約する際に委託契約を締結し、新しい担当者を決める際にはサブ担当をつけるという形を取っています。これによって、一人の職員だけが担当することを防ぎ、顧客の引き抜きリスクを軽減しています。


大竹:

なるほど。その点はしっかりとルールを設けることが大事ですね。

少し話を戻しますが、退職理由についての見抜き方についてもお聞きしたいです。面接が上手な方もいると思いますが、そういった方を見抜くコツなどはありますか?


竹谷:

いや、それが本当に難しいんですよ。もし相手がプロのような人だったら、面接だけでは見抜くのが難しいケースもあります。


大竹:

そうですよね。我々も過去に面接で見抜けなかったと反省することがあります。


竹谷:

そういう場合には、後から確認書を提出してもらったり、特に幹部クラスの採用では身元調査を行ったりすることもあります。特に責任の大きなポジションに就く場合は、こうした確認作業が必要になりますね。


大竹:

なるほど。退職理由を聞く際のポイントなどもありますか?


竹谷:

はい。退職理由をいきなりストレートに聞いてしまうと、相手が身構えてしまいます。ですので、サンドイッチ方式を使うのが有効です。


大竹:

サンドイッチ方式とは?


竹谷:

まず、答えやすい質問から始めて、徐々に核心に迫る質問をしていきます。そして最後にまた和らげる質問をすることで、相手が自然に本音を話しやすい環境を作るんです。こうしたテクニックを使うことで、意外な本音が引き出せることもあります。


大竹:

なるほど。質問の仕方次第で相手の本音が見えてくることもあるわけですね。


竹谷:

そうですね。聞き方を工夫することで、相手が隠していることや違和感のあるポイントを掘り下げやすくなります。


大竹:

ありがとうございます。では、次のポイントに進んでいきたいと思います。

では、ポイント1つ目の最後の部分、「確認書」についてお話を伺いたいと思います。



竹谷:

すみません、その前に「面接がうまい人の見抜き方」について、少し補足したいのですが。


大竹:

はい、ぜひお願いします。


竹谷:

面接の際にいくつかポイントがあると思います。1つは、質問に対してきちんと答えられているかどうか。質問をそらさずに、真摯に回答しているかが重要です。


また、コミュニケーション能力も大切です。そして、ある程度の経験者を採用する場合、「あなたはうちの事務所でどのように貢献できますか?」と質問するのも一つの手です。こうした質問を投げかけることで、その人がどれだけ具体的なビジョンを持っているかが分かります。


大竹:

なるほど。面接の中で、具体的なイメージを持って話せるかどうかも重要ですね。


では、「確認書」についても説明をお願いします。


竹谷:

はい。「確認書」は、採用面接時に求職者に記入してもらう書類です。


具体的には、

- これまでの転職ごとの退職理由を改めて記載してもらう

- 健康状態についての情報(過去2~3年の治療歴や投薬状況など)


といった内容を書いてもらいます。


ただし、プライバシーの問題にも関わるため、記入はあくまで本人の自由としています。

ただ、この確認書を通じて、経歴詐称を防ぎ、本当の退職理由を確認することが目的となります。


大竹:

なるほど。プライバシーの侵害になるのでは?といった質問もあるかと思いますが、その点についてはどのように対応されていますか?


竹谷:

はい、そのような質問を受けることもあります。ですが、経歴詐称を防ぐことは採用選考において非常に重要です。また、健康状態についても、事務所で100%のパフォーマンスを発揮してもらうために確認する必要があります。


特に、現在進行形で重大な健康問題を抱えている場合、業務遂行が難しくなる可能性があるため、確認書を通じてその点を把握することが重要だと考えています。


大竹:

つまり、「書かなくてもいい」と伝えつつも、業務上必要な確認として記入を求めるということですね。


竹谷:

そうですね。例えば、本籍や出生地、家族構成などの個人情報は職業安定法第5条に抵触するため聞いてはいけませんが、経歴や健康状態については業務に直結するため、確認することは問題ありません。


大竹:

なるほど。では、確認書に記載された内容が後から虚偽であることが発覚した場合、どのような対応が可能なのでしょうか?


竹谷:

一度採用した後に虚偽が判明した場合、即時解雇は難しいことが多いです。ただし、入社時に確認書へ記載した内容と事実が異なる場合、「なぜ嘘をついたのか?」と問いただすことができます。


また、嘘をついたという事実が残るため、本人も非常に居づらくなるでしょう。さらに、その虚偽の内容が業務遂行に重大な支障を与える場合には、解雇も検討できるケースもあります。


大竹:

例えば、学歴詐称の場合などはどうでしょうか?


竹谷:

学歴詐称だけでは、事務所や会社に実際の影響がなければ解雇するのは難しいです。ただし、「税理士資格がある」と嘘をついていた場合は大問題です。業務遂行に直接影響があるため、即時解雇の対象になり得ます。


大竹:

なるほど。業務遂行に影響があるかどうかが重要なポイントなんですね。


では、質問をいただいています。「ご家族の状況(小さなお子様がいる、要介護の親御様がいるなど)が勤務に影響する可能性がある場合、それを質問するのは違法になるのでしょうか?」という質問です。


竹谷:

家族の状況については、まず「この質問をしてもいいですか?」と本人に確認を取った上で聞くのがベストです。「はい」と答えた場合に限り、質問を進めることが望ましいですね。


また、「介護が必要な家族がいる場合、勤務に影響が出る可能性がありますか?」など、業務に関連する形で質問をすることは問題ありません。ただし、「家族構成は?」「結婚の予定は?」といった質問はNGです。


大竹:

なるほど。質問の意図を明確にし、業務に関わる範囲で聞くことが重要なんですね。


竹谷:

そうです。例えば、「小さなお子さんがいると、学校から呼び出されることがあるかもしれません。それに対応できる体制を事前に考えておきたい」という理由で聞くのであれば問題ありません。


大竹:

それならば、本人も納得した上で回答しやすくなりますね。


竹谷:

そうですね。聞き方を工夫することで、相手が話しやすくなるということですね。


大竹:

ありがとうございます。では、他にご質問がなければ、次のポイントに進みたいと思います。追加の質問があれば、随時お答えいたしますので、お気軽にどうぞ。







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