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②採用時:提出書類と雇用契約書のポイント~職員の独立を防ぐ就業規則の作り方~

  • 執筆者の写真: 大竹 邦明
    大竹 邦明
  • 5月27日
  • 読了時間: 6分

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税理士事務所 所長向けに「職員の独立を防ぐ就業規則の作り方~5つのポイント~」座談会を開催しました。(2022年10月開催)

本記事では2つ目「採用時:提出書類・雇用契約書のポイント」について抜粋して記事にまとめました。

講師      :社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ 代表社員 竹谷 保宣

ファシリテーター:株式会社KACHIEL 大竹 邦明


大竹:

では、ポイントの2つ目「採用時」についてお話を進めていきます。ここでも提出書類や雇用契約書の重要性が出てくるかと思いますが、採用時に特に大切なポイントとしてはどんなことがあるのでしょうか?


竹谷:

士業事務所の場合、まず考えないといけないのが「営業秘密の保持」と「個人情報の漏えい防止」です。そして、退職時のことまで考えておく必要があります。そのため、競業避止や副業の制限についても、雇用契約書や誓約書に記載しておくと良いでしょう。


これは少し新しい発想ですが、誓約書だけでなく、雇用契約書にもこれらの内容を明記することで、より強い拘束力を持たせることができます。詳細については後ほど説明しますが、このアプローチを取り入れることで、事務所のリスク管理がしやすくなりますね。


大竹:

なるほど。実際に誓約書を入社時に取得している事務所はどのくらいの割合でしょうか?


竹谷:

私が関わった税理士事務所の多くでは、あまり誓約書を取っていない印象ですね。しかし、誓約書は取るべきです。なぜなら、誓約書がないと、営業秘密や個人情報の管理が不十分になり、実際に問題が起きた際に担保できるものがなくなるからです。


例えば、営業秘密については「事務所外に公開されていない情報」が該当します。事務所の中では自由に閲覧できても、外部には公開されていない情報であることが重要です。


特に、料金体系や業務ノウハウは営業秘密に該当することが多いです。もし事務所のホームページに料金表が掲載されていれば、営業秘密とは言えません。しかし、クライアントごとに異なる料金設定をしている場合、それは営業秘密として保護される可能性が高いです。


大竹:

なるほど。個人情報の取り扱いについてはいかがでしょうか?


竹谷:

個人情報の中でも、特に特定個人情報(マイナンバーなど)は慎重に取り扱う必要があります。税理士事務所の場合、クライアントの従業員情報や取引先の情報など、多くの個人情報を扱います。


例えば、名刺に記載されている情報(名前・生年月日・住所・電話番号など)も、特定個人情報に該当する場合があります。これらを無断で持ち出すことは禁止し、退職時には適切に返却するように誓約させることが重要です。


大竹:

競業避止についてはどうでしょうか?


竹谷:

競業避止については、同業他社への転職や独立開業を制限するものですが、憲法が保障する「職業選択の自由」に抵触する可能性があるため、制約を設けるには慎重な対応が求められます。


ただし、競業避止を有効にするためには、何らかの対価を提供する必要があります。例えば、「2年間同業他社に転職しない代わりに一定の金銭を支払う」といった形ですね。こうした工夫をすることで、競業避止義務をある程度実効性のあるものにできます。


大竹:

なるほど。あくまで抑止力として結ぶ形が現実的ということですね。


竹谷:

そうですね。特に税理士資格を持っている方は、独立を目指しているケースも多いため、営業秘密やクライアント情報を守るための規則をしっかり整備しておくことが重要です。


大竹:

最後に、黄色でマークされた部分が気になりますが、こちらについて説明していただけますか?


竹谷:

これは、ある税理士事務所で実際に導入されている制度です。退職時にクライアントを持ち出した場合に備えて、採用時点で明確なルールを設定するというものです。


具体的には、


入社前から持ち込んだクライアントについては、顧問料3ヶ月分の支払い義務を課す。


入社後に自力で開拓したクライアントについても、顧問料3ヶ月分の支払い義務。


事務所が割り当てたクライアントについては、顧問料6ヶ月分の支払い義務。


決算料については、転職時期に応じて別途精算。


このような制度を設けることで、退職時のトラブルを未然に防ぐことができます。


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大竹:

これを導入すると、退職する職員側も慎重になりますね。


竹谷:

はい。この制度があることで、「事務所が本気でクライアントの流出を防ごうとしている」というメッセージが伝わります。


大竹:

実際にこの制度が適用されたケースはありますか?


竹谷:

はい、実際に支払った職員もいました。結果的に、事務所側としても円満に退職してもらうことができました。


大竹:

確かに、これがあることでトラブルを回避できますね。


竹谷:

ただし、注意すべき点として、これは「損害賠償」ではなく「顧問先を持ち出した場合のルール」として設定する必要があります。法律上、損害賠償を事前に決めておくことは制限されているため、契約の目的を明確にすることが大事です。


大竹:

なるほど。では、こうした内容を雇用契約書に記載することも可能でしょうか?


竹谷:

はい、可能です。むしろ、雇用契約書に記載することで、誓約書の存在を忘れにくくなります。


多くの事務所では、誓約書を提出させても、そのコピーを本人に渡していません。そのため、時間が経つと誓約内容を忘れてしまうことが多いです。しかし、雇用契約書に誓約内容を盛り込んでおけば、契約書を見直すたびに内容を思い出せるようになります。


大竹:

確かに、契約書を双方で保管することで、いつでも内容を確認できるようになりますね。


竹谷:

そうですね。例えば、A4サイズの雇用契約書が3枚程度で済む場合もありますが、詳細なルールを盛り込んだ結果、10枚以上になる事務所もあります。


大竹:

なるほど。シンプルな方がいいですが、大事な部分はきちんと明記すべきですね。


竹谷:

そうです。就業規則や雇用契約書を整備することで、事務所を守るための仕組みを作ることができます。


大竹:

ありがとうございます。では、次のポイントに進みたいと思います。



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