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譲渡後も働き続けるという選択 ~“引退しない”税理士の新しいキャリア~

  • 執筆者の写真: 菅原 良平
    菅原 良平
  • 5月13日
  • 読了時間: 5分

「もうすぐ引退を考える年齢だけど、まだまだ現場で働きたい」

「これまで築いてきた顧問先との関係を、急に手放すのは惜しい」


このように感じている税理士の方は、決して少なくありません。特に経験を積んだ税理士にとって、事務所の譲渡やM&Aは単なる“終わり”ではなく、“次のステージ”として捉える時代が来ています。今回の記事では、「引退しない」という選択肢に光を当てながら、税理士として譲渡後も働き続ける新しいキャリアの形をわかりやすく解説します。


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1.“引退しない”という選択肢が注目される背景


-税理士業界における人手不足と高齢化の現実-


 税理士業界では近年、人材不足と高齢化が深刻な問題になっています。全国の税理士の平均年齢は60歳を超え、70代でも現役で活躍している方が多くいます。これは一見、元気な業界のように見えますが、実は若手のなり手が減っており、後継者難が進んでいることを示しています。


特に地方では、若手税理士の採用が難しく、所長税理士が高齢になっても現場を離れられない事務所が多数あります。そんな中、最近注目されているのが、「事務所を譲っても、自分は税理士として働き続ける」という選択肢です。


従来のM&Aというと、「譲渡=引退」と捉える人が多かったかもしれません。しかし今では、「一部だけ譲渡する」「運営は任せて、現場には残る」といった柔軟な選択が可能になってきています。この背景には、働き方の価値観の変化もあります。「60歳で引退」というのが昔の常識でしたが、今では70代、80代まで生涯現役を希望する税理士も増えています。


健康であれば、自分のペースで続けられる――そんな希望を叶える方法の一つが、

今回ご紹介する“引退しないM&A”という考え方なのです。


2.M&Aとセットで考える“働き続ける承継”とは?


譲渡=引退ではない、新しいM&A活用の形


 税理士事務所のM&Aと聞くと、「すべてを売って、すぐに引退」というイメージが強いかもしれません。しかし最近では、事務所を譲渡しても自分が一定期間関与し続ける、「働き続けるM&A」が増えています。これは、単に経営権を譲るだけではなく、「現場には引き続き関わる」「顧客の担当をしばらく続ける」といった形で、譲渡後の働き方を柔軟に設計する方法です。


なぜこのような形が増えているのでしょうか? それは、買い手側にもメリットがあるからです。新しく事務所を引き継いだ税理士にとって、前任の所長が一定期間現場に残ってくれると、顧問先との関係がスムーズに引き継がれます。事務所のスタッフも安心し、引き継ぎの混乱を防ぐことができます。


一方で、売り手にとっても、「すぐに引退するには惜しい」「顧問先との関係を徐々に整理したい」といった希望を実現できるため、双方にとって有益な関係を築けるのです。

M&Aというと、「一気にすべてを手放すもの」と思われがちですが、実際には「段階的に譲る」ことも可能です。働き方や関与度合いを事前に話し合い、譲渡契約に盛り込むことで、自分らしい“第二のキャリア”が築けるのです。


3.買い手の視点:所長が残ることのメリットとリスク


安定承継・顧問先引き継ぎ・属人性の分散


 買い手の立場から見ても、前所長がしばらく残って働いてくれることには、

大きなメリットがあります。



このようなリスクを回避するためにも、譲渡前の時点で「誰が何を担うか」を明確にし、

契約にしっかりと盛り込むことが重要です。


4.譲渡後の働き方はどう決める?


─ 雇用・業務委託・顧問契約…メリットと注意点─


 「M&A後も税理士として働き続けたい」と思っても、どのような形で関与を続けるかによって、日々の働き方や報酬の仕組みは大きく変わってきます。働き方には大きく分けて、

次のような形があります。



「これまで所長としてバリバリ働いていたのに、急に部下のように扱われるのはつらい」

そんな声も聞かれます。だからこそ、契約内容はお互いの立場を尊重したバランスが必要です。また、税理士としての「独立した登録」を維持するのか、税理士法人の社員税理士になるのか、といった法的な立ち位置も検討ポイントになります。


M&Aによって事務所を譲渡する際には、「売るか、引退するか」ではなく、「どのように関与し続けるか」を一緒に計画することが、長期的に成功するカギになります。


5.“引退しないM&A”を成功させるための準備とは?


─権限移譲、役割整理、買い手との事前調整がカギ─


 “引退しないM&A”を実現するには、事前の準備と関係者との綿密なすり合わせが欠かせません。売り手・買い手の双方が納得できる形で進めるためには、次の3つの準備が特に重要です。



これらを丁寧に取り決めておくことで、お互いに気持ちよく“共存”することが可能になります。特に税理士の場合、顧問先との関係が強いだけに、M&A後のちょっとした混乱が大きな損失につながりかねません。準備を怠らず、段階的な移行計画を持って臨むことが、“引退しないM&A”の成功につながります。


6.まとめ


─生涯現役を望む税理士にこそ知ってほしい選択肢─


 税理士として長年走り続けてきたからこそ、「このまま引退するには惜しい」「顧問先との関係を大事にしたい」と思うのは自然なことです。事務所の譲渡は終わりではなく、「働き方を再設計するチャンス」と考えることができます。


M&Aは必ずしも、事務所を手放し、静かに身を引くためのものではありません。むしろ、これからの時代は「譲渡して、なお活躍し続ける」ことができる柔軟な仕組みとして、税理士自身のキャリア設計において有力な選択肢となっています。


生涯現役を目指す税理士にとって、M&Aは終点ではなく、新しい始まりです。時間や体力に合わせた関わり方、知識や経験を次世代に伝える役割、自分のペースで仕事を続ける自由。そのためには、「いつか引退」と曖昧に考えるのではなく、「どのように働き続けるか」を見据えて、早めに準備を始めることが重要です。


M&Aを通じて、税理士としてのキャリアをリセットするのではなく、

「再設計」する――その一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。


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