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④譲渡・合併までの準備とスケジュール 税理士事務所の合併・承継セミナー

  • 執筆者の写真: 大竹 邦明
    大竹 邦明
  • 3月17日
  • 読了時間: 8分

後継者不在・職員の雇用継続・顧問先へのサービス継続に悩む所長が多い「税理士事務所のM&A」。全国から承継・合併・税理士法人化の相談が寄せられる株式会社KACHIELの税理士専門のM&Aコンサルタント大竹邦明氏によるセミナーをお届けします。ネット検索すればすぐに調べられる表層の知識ではなく、現場目線のリアルな経験談をお話ししました。



金井先生×八木橋先生 経営統合までの流れ



大竹:ここでですね、実名で私たちの情報を出してもいいですよとおっしゃっていただいた先生がお二人いらっしゃるので、ご紹介させていただきます。こちらの金井先生と八木橋先生ですね。


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このお二方は、今年の4月1日に経営統合をされました。現在、八木橋先生が税理士法人ファシオ・コンサルティングの代表を務められていて、金井先生は譲渡によって経営統合をされました。もともと個人事務所の所長をされていたのですが、現在はファシオ・コンサルティングのパートナー社員税理士をされています。また、元々の事務所(支店)の所長にもなられています。


では、金井先生と八木橋先生の経営統合までの流れ、そして経営統合後について、一緒に見ていければと思います。



STEP1 金井先生からのご相談


まず、どのような経緯だったのかというと、金井先生から最初にご相談をいただいたのが2023年6月でした。

「65歳ぐらいまでには後継の体制を整えて、関与先の方々に安心していただける状況を作りたい」とのご相談でした。

きっかけは、顧問先の中にM&Aを実行されたお客様がいらっしゃり、「自分も早く行動しないとまずいのではないか」と思われたことだったそうです。


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KACHIEL M&A支援のステップ


弊社におけるご支援全体の流れとしては、ステップ1からステップ7まであり、最初のご相談は無料相談という形でお受けしました。


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次に、弊社では候補先の無料調査を行っています。事務所が抱えている問題や、どこかと一緒になりたいと考えた際に、候補先がそもそもいるのかどうか、また、どのような条件で受け入れてもらえるのかを調査しました。

調査結果を確認した後、Web面談を実施し、その後、対面での面談を行いました。

ここでは、譲渡希望条件をお相手からいただき、1対1で実行準備を進める流れです。



STEP2 候補先無料調査の結果・八木橋先生との出会い


無料調査の内容としては、まず事務所の所在地や会計ソフト、従業員数などを調査します。また、事務所の拠点数に対して有資格者の余剰があるかどうか、もし引退を考えている先生がいた場合に、事業継続が可能かどうかも確認します。それに加えて、職員の雇用継続の可否や譲渡のポジション、実際にお話を進めるタイミングなども調査し、書類選考のような形で進めていきます。

金井先生のケースでは、調査を行った結果、1週間ほどで7つの事務所が候補に挙がりました。この中に八木橋先生もいらっしゃいました。


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STEP3 WEB面談


そして、1ヶ月後にはWeb面談で初めての接触を行いました。無料調査の結果をもとに、条件が合わない4つの事務所を除外し、残った3つの事務所と面談を実施しました。

Web面談では、基本的に自己紹介くらいしかできません。やはりオンラインだと雰囲気が硬くなってしまうため、「この人が良い」という判断は難しいですが、「この人とは合わなさそう」ということは何となく分かるものです。


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STEP4 オフィス訪問・会食でのコミュニケーション


その後、Web面談で合わないと感じた1つの事務所を除外し、残った2つの事務所に対して、金井先生と一緒に事務所訪問を行いました。

事務所によって組織の形態は大きく異なります。例えば、縦のピラミッド型の組織を築いている事務所もあれば、幹部の方や職員さんも含めてフラットな組織の事務所もあります。また、小規模ながら有資格者の方で構成されている事務所もあり、訪問を通じて「他の事務所はこんな風になっているんだ」と見えてくることが多いです。

訪問は基本的に夕方に行いましたが、やはりオフィスでは硬い話になってしまうため、必ず会食の場を設けています。ここで、よりリラックスした雰囲気で雑談をし、信頼関係を築けるお相手か見極めていくことが重要になります。


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例えば、金井先生の場合、税理士会の役員をされているという話から、「結構大変ですね」といった雑談が始まりました。その後、「事務所はどんなスタイルなんですか?」といった話題に発展し、過去の経験や考え方など、様々な話を交わすことができました。


こうした雑談の中で、「この人なら相談できそうだな」という感覚を持てるかどうかがポイントになります。また、食事の場では、自然に話せる人とぎこちなくなってしまう人がはっきり分かれることが多いです。


STEP6 譲受希望条件


最終的には、自然に話せると感じた方と一緒になっていくことが非常に多いのですが、ステップ6では、八木橋先生から譲受希望条件をいただきました。


金井先生も、「この人だったら細かい条件は気にしないので、一緒になりたいです」と決断され、1対1での実行準備に進める形となりました。


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はい、他の事務所でも全国的にこんなイメージですね。「この人だったらいいかな」と思っていただいているようなイメージです。


STEP7 譲渡・経営統合の準備


実行準備についてですが、まず譲渡契約や譲渡実行の法的手続きがあります。これは金井先生と八木橋先生との実際のスケジュールとは月が若干違うものの、基本的な進め方は同じです。具体的には、譲渡後のポジションや役員報酬の設定、現役続行期間、譲渡対価の支払い方法などを決めていきます。譲渡実行日までに最低でも4〜5ヶ月ほどかかるため、全体の流れとしては1年弱を見ておいたほうが安全です。


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このあたりは比較的すぐに決まるのですが、仲介会社を介する場合やご自身で進めるケースでは、職員や顧問先の視点を見落としがちです。職員については、特に事業継続には不可欠な存在であるため、不利益が生じたり、不安を与えてしまうと、転職を考えられてしまう可能性があります。ですので、就業規則や退職金制度の違いを事前に確認し、早めに準備を進める必要があります。例えば、1月が譲渡実行日であれば、3〜4ヶ月前から準備を進め、個別の労働条件も実態が変わらないように整えていきます。


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一般的なM&Aでは、譲渡実行後に従業員へ周知することが多いですが、弊社の支援では、譲渡実行の2ヶ月前には顔合わせを行っています。職員の協力なしでは事務所の継続が難しいため、単なる説明会ではなく、食事会やランチ会を通じて顔合わせを行い、「この人だったら安心できるな」と職員が感じられるような場を設けます。そのため、事前に所長が選択した相手であるという安心感を持って、前向きに受け入れられるように進めています。


顧問先への対応についても、譲渡実行と同時によくある厚紙の重々しい経営統合のご案内状を出すのではなく、前向きな営業資料を作成し、職員とともに案内を行うことが重要です。例えば、「金井会計事務所は税理士法人ファシオ・コンサルティングの一員となりました」「これまでと同じく継続しつつ、新体制でさらに充実したサポートを提供していきます」といったメッセージを発信します。このようなご案内を行うことで、「金井先生、事務所を売ってしまったの?」という反応ではなく、「金井先生、やりましたね!おめでとうございます!」という前向きな反応を得やすくなります。


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また、譲渡実行にあたっては、名義変更などの手続きが大変ですが、職員と顧問先への対応をしっかり行うことで、スムーズに進めることができます。



経営統合直前



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ファシオ・コンサルティングさんでは、譲渡実行日の2ヶ月前から新年会に金井先生や職員の方々が参加し、交流を深めてきました。譲渡日当日には、八木橋先生がFacebookで投稿し、多くの「いいね!」をいただいていたりします。


さらに、譲渡実行後も積極的な交流が続いています。例えば、金井先生の毎年恒例のお花見に八木橋先生が参加されたり、譲渡後2ヶ月後には、ファシオ・コンサルティングが契約する埼玉スタジアムのビューボックスでサッカー観戦を一緒に楽しむなど、職員同士の関係を深めています。ホームページにも金井先生がしっかり並んでおり、新しい体制で事務所運営を進めていることがわかります。


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M&Aというと「秘密裏に進める」「書類中心」というイメージがあるかもしれませんが、事前に積極的な交流を図ることで、職員や顧問先に安心してもらいながらスムーズに経営統合を進められるのかなと思います。


また、先日7月には、金井先生と八木橋先生からのお誘いで「お疲れ様会」を開催しました。その時の二次会の写真では、先生方が並んで事務所の経営について語り合っている様子が見られました。


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これは、もともと個人で事務所を経営していた先生方にとってはなかなか得られない環境ではないでしょうか。

全国の支援先の先生方の多くが、「これまで一人で抱えていた経営の重圧が軽減された」「困ったときに相談できる仲間ができた」と感じています。税理士としての専門的な悩みも、これまでは外部の専門家へお金を支払って相談するしかなかったのが、M&A後は身近な仲間と相談できるようになったというメリットを感じている方が多いです。


M&Aというと「引退しなければならない」とか「サラリーマンになってしまう」といった誤解もありますが、実際には経営のパートナーが増え、より良い環境で事務所運営ができるようになるケースが多いです。もちろん、M&Aの形態によってはサラリーマンのような立場になるケースもありますが、弊社のマッチングではそのようなケースは少なく、経営を続けながら事務所を成長させるための手段として活用されることが多いです。


このように、M&Aを通じて経営の仲間を増やし、事務所の発展につなげることが可能であることを、全国の先生方にも知っていただきたいと考えています。




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KACHIELは税理士向け実務セミナー事業を15年以上運営し、全国に2.3万人以上の税理士ネットワークをもつ会社です。弊社をご利用頂く税理士事務所所長・税理士法人代表であるお客様などから年間50件以上、事務所承継や組織化のご相談を頂いております。

単なる「売却」に限らず、譲渡側の所長の現役続行を前提とした「支店成り」「税理士法人化」「税理士法人合併」などのご支援を全国で多く行っています。

​これまで弊社ご支援先ではM&Aを原因とした職員様の離脱が過去通算0人です。

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代表取締役 久保 憂希也

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設立  2009年2月

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