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②承継・合併のパターン 税理士事務所の合併・承継セミナー

  • 執筆者の写真: 大竹 邦明
    大竹 邦明
  • 3月17日
  • 読了時間: 7分

後継者不在・職員の雇用継続・顧問先へのサービス継続に悩む所長が多い「税理士事務所のM&A」。全国から承継・合併・税理士法人化の相談が寄せられる株式会社KACHIELの税理士専門のM&Aコンサルタント大竹邦明氏によるセミナーをお届けします。ネット検索すればすぐに調べられる表層の知識ではなく、現場目線のリアルな経験談をお話ししました。



税理士事務所の合併・承継パターン



大竹:はい、それでは2つ目のパートに入ります。ここから少しだけ勉強っぽくなりますが、合併・承継のパターンについて振り返ってみたいと思います。


まず、譲渡の対象別に見ていきます。税理士法人や会計法人というケースもありますが、今回は省略します。


主に以下の3つのパターンがあります。


・個人事務所のみのケース

・個人事務所+会計法人のケース

・税理士法人のケース

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個人事務所については、基本的に事業譲渡しかありえません。譲渡後には廃業手続きを行い、税理士会への変更手続きが必要になります。


次に、個人事務所+会計法人のケースでは、株式譲渡を組み合わせることもあります。ただし、会計法人をコンサルティング目的などで活用する場合もあるため、株式譲渡を含めるケースはそれほど多くありません。


税理士法人の場合は、選択肢がさらに広がります。具体的には、


・事業譲渡(現在の税理士法人を清算する)

・税理士法人の合併

・持分譲渡


これらの方法があります。


実際に多いのは、個人事務所も税理士法人も 事業譲渡 です。最近、合併を検討していたお客様も最終的に事業譲渡の方が良いという結論に至ったケースがありました。



税理士事務所の譲渡事例 Y先生のケース



はい、では実際にどのようなイメージなのか、具体的な条件とともに見ていきたいと思います。


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先ほどご紹介した東北地方のY先生のケースですね。まず、譲渡対象は個人事務所のみでした。譲渡方法としては、事業譲渡を行った後、別の個人事務所の先生と一緒になり、新たに税理士法人を設立されました。


いろいろな観点があると思いますが、Y先生ご自身の観点、職員の観点、その他の観点について整理していきます。


まず、ポジションについてですが、このケースでは個人事務所同士が一緒になったため、現在の拠点はそのまま継続しています。結果として、元々所長だったY先生は支店の所長として引き続き事務所を運営し、税理士法人の社員税理士としても継続される形となりました。


次に、所得についてですが、個人事務所時代は「利益=所得」という形でしたが、法人化後は役員報酬として支給される形になりました。Y先生の希望額を考慮し、年収1,200万円で設定されています。


また、「10年間は現役続行したい」というご希望がありましたが、お相手の先生側から「10年間は社員税理士のポジションを保証する」という約束を取り付けることができました。


税理士法人化の際の持分割合については疑問もあるかと思いますが、基本的に譲渡側となる先生からの出資はごく少額として設立されるケースがほとんどです。譲渡時点で持分を現物出資するケースもあり、譲渡後の影響をほぼゼロにする形で調整されています。


譲渡対価については、Y先生が一時金の受け取りを希望されませんでした。ただし、引退時には、その時の売上の1年分を退職金として受け取るという条件を設定しました。これにより、老後の資金面での不安も解消されました。


職員については、同条件で雇用が継続されています。就業規則も当面は拠点ごとに維持され、譲渡直後も業務に支障はありません。


また、後継者問題についても、大きな課題となっていましたが、本店には有資格者候補の職員が複数名在籍しているため、3年以内に本店から配置できる見込みとなっています。


さらに、会計ソフトについても、これまで使用していたものをそのまま継続して利用することとなりました。


このような形で進めることで、スムーズに事業譲渡を実現できたケースとなります。



税理士事務所の譲渡事例 B先生のケース



では、先ほどの税理士法人の支店のみで譲渡したケースについてお話しします。


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こちらは少しイレギュラーな形になりますが、譲渡対象は税理士法人の支店の職員と顧客ですね。

譲渡方法としては当然、事業譲渡という形になります。このB先生は、元の税理士法人に籍を残す必要があったため、本店の社員税理士として異動しました。旧支店への配慮としては、譲渡先となった税理士法人の支店の顧問として、引き継ぎ・顔つなぎに協力していただいています。

また、B先生の体調の問題ですが、譲渡後2か月で無事に手術を受けることができ、回復へ向かっています。

譲渡対価については税理士法人への支払いとなり、5,000万円を受け取ることができました。


拠点に関しては、元々職員の方々もいらっしゃいましたが、新たな支店長としてB先生よりも若い税理士の方が譲受側税理士法人の本店から赴任し、体制が整いました。

その結果、職員の離脱はなく、全員が継続して同条件で働いています。顧問先についても、引き続き契約継続していただける状況となっており、むしろ紹介により新規顧客が増えているというお話を伺っています。



税理士法人のM&Aでも「事業譲渡」が多い理由



さて、先ほどの論点に戻りますが、なぜ税理士法人の合併は少なく、事業譲渡が多いのでしょうか?この点についてお話しします。


まず、皆様がよくご認識されていることとして、税賠リスクをしっかり引き継ぐ必要があるという点です。このリスクが非常に大きいため、合併が敬遠されることが多いのです。


また、それ以外の観点として、税理士法人の合併では貸借対照表(BS)も引き継ぐことになります。これにより、譲受側の税理士法人では社員税理士との関係性についての不安が生じることがあり、別のリスクが発生することになります。

例えば、譲受側の税理士法人がBSを引き継ぐと、当然、純資産が増えることになります。しかし、それに伴い、現在の社員税理士が「独立したい」と考えた場合、持分を時価で買い取る必要が出てきます。これを避けたいと考えるケースなどもあり、譲受側の目線では事業譲渡が好まれることが多いのです。


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リスクの話をしましたが、実際に売り手の目線ではそれほど違いがないケースもあります。なぜなら、一定期間現役を続行することで、一時金を受け取らなくても手取り額の7〜8割を確保できる場合があるためです。


具体的に説明すると、事業譲渡の際の譲渡対価(一時金)は雑所得として扱われます。税理士事務所のM&Aでは「報酬上乗せ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、事業譲渡の対価を一時金としてではなく、他の所得に振り分けて条件設定し支払うことを指します。


例えば、事務所の譲渡対価の合計額を5,000万円と仮定します。この金額を分割して支払うのですが、まず、譲渡時の一時金を小さく設定し、その後、5年1か月間にわたり役員報酬に変えて譲渡対価相当額を受け取るという方法です。


経過年数の読み方としては、一緒になる前が0年目、一緒になってから1年目、2年目…と続きます。最初の3年間は従来どおり働き、4年目以降に業務・役割の引き継ぎを開始し、所長交代を進めるイメージです。5年目には引き継ぎが完了し、最後の1か月間は報酬が発生しない形となります。


最終的に、5,000万円の譲渡対価を全額支払うために、役員報酬を上乗せして分散させるケースは多くあります。例えば、月額125万円の役員報酬を5年間支払い、最後に退職金を法人税が発生しない形で支給することで、トータルで7割から8割程度の手取り額を確保することが可能となります。


こうした方法は、個人事務所でも税理士法人でもよく活用されています。結果として、リスクの少ない事業譲渡を選択するケースが非常に多いというのが実態です。ですので、事業譲渡に対する手取り額減少のリスクはそれほど気にする必要はない、ということをお伝えしたいと思います。


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単なる「売却」に限らず、譲渡側の所長の現役続行を前提とした「支店成り」「税理士法人化」「税理士法人合併」などのご支援を全国で多く行っています。

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