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税理士事務所の後継者はどのように育てる?

  • 執筆者の写真: 菅原 良平
    菅原 良平
  • 4月4日
  • 読了時間: 5分

 税理士業界において、後継者育成は避けて通れない重要な課題です。多くの税理士事務所が後継者問題に直面しており、これは事務所の存続や発展に大きく影響を与える問題です。後継者を育てることは簡単ではありませんが、計画的かつ戦略的に取り組むことで、税理士事務所の未来をより良いものにすることができます。


後継者の存在は、事務所にとって「将来の担保」であると同時に、顧客や職員にとっての「安心感」の源にもなります。育成の仕組みを構築することは、単なるリスク管理の枠を超えて、経営そのものの安定性を高めることにもつながるでしょう。


本記事では、税理士事務所における後継者育成に必要な要件やアプローチ、育成が難しい理由、そして後継者を育てられなかった場合の「勇退」や「M&Aによる承継」といった選択肢について詳しく解説します。後継者不在に悩む多くの税理士がどのようにこの問題に向き合っているかを知る手がかりにもなる内容です。



 

1. 税理士事務所の後継者育成に必要な要件

 

 税理士事務所の後継者を育てるためには、いくつかの重要な要件があります。これらは相互に関連し合い、バランスよく取り組むことで初めて効果を発揮します。


 

採用力

 

後継者育成の第一歩は、優秀な人材を採用することです。しかし、税理士業界では人材不足が深刻化しており、特に税理士資格者を確保することが難しい状況です。そのため、事務所として魅力的な職場環境を提供し、人材を引き付ける努力が必要です。

採用時には、資格やスキルだけでなく、経営者としての資質や意欲も重視する必要があります。単なる「補助者」ではなく「未来の経営者候補」として見極める目が問われます。


 

試験合格のサポート

 

税理士資格取得は後継者育成において欠かせないステップです。税理士試験の合格には長い時間と努力が必要であり、その過程で事務所として支援する体制を整えることが求められます。

合格後も、実務力や経営力の習得支援を継続することで、事務所の次世代を担う人材へと成長していきます。OJT(職場内訓練)だけに頼らず、体系的な育成プログラムを設けることが望ましいです。


 

営業利益の確保

 

安定した営業利益は、後継者育成に必要な投資や承継準備を可能にします。特に、小規模な税理士事務所では営業利益が限られるため、その確保が課題となります。以下の施策が有効です。


これらを通じて、育成資源の原資を確保することが大切です。人材育成は「コスト」ではなく「成長への投資」と捉えるべきでしょう。


 

権限移譲

 

段階的な権限移譲は、育成の仕上げとして極めて重要な要素です。候補者に対し、実際の判断や責任ある役割を与えることで、経営者としての意識と自信を育てていきます。



権限移譲には時間がかかりますが、この段階でしっかりと経験を積ませることが将来の成功につながります。


 

2. 税理士事務所の後継者育成アプローチ

 

 税理士事務所の後継者育成では、「1人だけ集中して育てる」か、「複数候補を並行して育てる」かという2つのアプローチがあります。それぞれメリットとデメリットがありますので、自社に適した方法を選ぶことが重要です。



 

3. 税理士事務所で後継者育成が進まない理由

 

 多くの税理士事務所で後継者育成が進まない理由として、「時間」「人材」「計画」の

3つの不足があります。



 

4. 後継者不在でも「勇退」は可能

 

 もし後継者育成に失敗した場合でも、「勇退」という選択肢があります。勇退とは、自身で事業運営から退くものの、その過程で顧問先やスタッフへの影響を最小限に抑える形で経営から離れる決断です。この際には以下3つの方法があります。



所長税理士が勇退を選択する際には、顧問先やスタッフへの配慮が重要です。顧問先への説明やスタッフの雇用維持、財務の整理など、慎重な計画と準備が求められます。また、専門家のアドバイスを得ることで、法的・税務的なリスクを回避し、最適な選択肢を選ぶことができます。


 

5. 後継者が育たない場合の選択肢 ― M&Aという道

 

 後継者育成に取り組んだものの、思うように人材が育たなかった場合や、そもそも候補者がいないというケースも少なくありません。そうした場合、「勇退」という形だけでなく、M&A(事業譲渡)という選択肢も現実的かつ有効な方法です。


M&Aによる承継とは、自身が築いてきた税理士事務所を第三者に引き継ぐという形です。必ずしも法人に限らず、個人事務所でもM&Aの活用は年々広がっており、実際に承継の一つの手段として成功しているケースも増えています。


この方法を選ぶことで、以下のようなメリットがあります。



M&Aと聞くと大掛かりな手続きが必要と思われがちですが、個人事務所でも条件や規模に応じたスキームが存在します。また、専門家のサポートを活用することで、必要な手続きを円滑に進めることも可能です。


後継者育成に失敗したからといって、すべてを畳んで終える必要はありません。むしろ、他者にバトンをつなぐという考え方は、これからの時代に合った柔軟な承継スタイルと言えるでしょう。


 

まとめ

 

 税理士事務所の後継者育成は、事務所の将来を左右する重要な課題です。優秀な人材の採用、税理士試験の合格サポート、安定した営業利益の確保、そして段階的な権限移譲が必要です。後継者育成に成功しなかった場合でも、「勇退」という選択肢があります。税理士事務所の所長は、顧問先やスタッフへの配慮を忘れず、慎重な計画を進めることが重要です。


後継者育成と並行して、事務所全体の人材育成にも注力することが大切です。後継者候補以外のスタッフのキャリア開発や成長機会を提供することで、税理士事務所全体の底上げと、将来的な選択肢の拡大につながります。税理士業界の変化に柔軟に対応しつつ、長期的な視点で後継者育成に取り組むことが、税理士事務所の持続的な発展につながるのです。





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