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税理士事務所の廃業、実際には何をしなければならない?

  • 執筆者の写真: 菅原 良平
    菅原 良平
  • 3月10日
  • 読了時間: 5分

更新日:4月14日

 税理士事務所の経営を長年続けてきた所長が、事業の引き際を考える際に「廃業」という選択肢を検討することは少なくありません。しかし、実際に廃業するとなると、手続きの多さや手間のかかる作業が待ち受けており、決して簡単なものではありません。本記事では、税理士事務所の廃業に伴う具体的な手続きや、その負担の大きさについて詳しく解説するとともに、M&Aによる譲渡というもう一つの選択肢について考えていきます。



 

1. 税理士登録の抹消手続き(廃業日の前日まで)

 

 税理士事務所を廃業する際には、まず税理士登録の抹消手続きを行う必要があります。これは税理士としての業務を正式に終了するための手続きであり、税理士法に基づいて定められています。具体的には、以下の手続きが求められます。


必要な手続きと書類













この手続きを怠ると、税理士会からの督促や不適切な税理士業務の疑いを持たれる可能性があるため、必ず適切に処理する必要があります。また、税理士登録を抹消した後は、名刺や看板、ウェブサイトなどから「税理士」の肩書を削除しなければなりません。これを怠ると、税理士法違反に問われるリスクがあるため注意が必要です。


さらに、税理士会員退会届も必要です。退会日は過去に遡ることはできませんので、注意が必要です。退会手続きには、会費の支払い状況や残高の確認も含まれます。


手続きの注意点


税理士登録の抹消手続きは、単に手続きを完了するだけでなく、税理士としての業務を正式に終了するための重要なステップです。そのため、慎重に進めることが求められます。


 

2. 顧問先への通知・契約解除 / 税務署への届出等

 

顧問先への通知と契約解除


 税理士事務所を廃業する場合、現在契約している顧問先へ事前に通知を行い、適切な契約解除の手続きを進める必要があります。特に長年付き合いのある顧問先ほど、突然の廃業が事業運営に与える影響は大きいため、慎重に対応しなければなりません。



顧問先への通知は、信頼関係を維持する上で非常に重要です。突然の廃業は、顧問先に大きな不安を与える可能性があります。そのため、事前に十分な準備を行い、丁寧に説明することが求められます。


さらに、顧問先が新たな税理士を探す際には、必要に応じてサポートを提供することで、円満な関係を保つことができます。


税務署・都道府県税事務所への届出


税理士事務所の廃業に伴い、以下の書類を税務署および都道府県税事務所に提出する必要があります。


これらの手続きが完了しないと、不要な税務申告や行政対応が必要になり、余計な手間が発生することになります。特に消費税の事業廃止届出書は、速やかに提出することが求められます。また、地方税の事業廃止届出書も、都道府県や市町村によって手続きが異なる場合があるため、事前に確認が必要です。


 

3. 職員の解雇

 

 税理士事務所に従業員を雇用している場合、事務所の廃業に伴い職員を解雇する必要があります。解雇は労働法に基づいた適切な手続きを踏まないとトラブルになりかねないため、慎重に進めることが求められます。


具体的な手続き



解雇に伴う補償や退職金の支払いなど、金銭的な負担も発生するため、財務状況を確認しながら進める必要があります。また、従業員の退職金制度を定めていた場合、退職金の支払い義務が発生することも考慮に入れなければなりません。特に、長期にわたって勤務した従業員に対しては、退職金の支払いが求められることが多いため、十分な準備が必要です。


 

4. 各種契約の解約・会計ソフト残債の支払い

 

 税理士事務所の廃業に伴い、オフィスの賃貸契約や各種リース契約を解約する必要があります。また、会計ソフトの残債やクラウドサービスの契約も確認し、適切な処理を行わなければなりません。


主要な解約項目



契約内容によっては違約金が発生する場合もあるため、十分に注意が必要です。特にオフィスの賃貸契約は、契約期間が長い場合があるため、早めの解約手続きが求められます。また、リース契約の解約時には、機器の返却や残存期間の支払いが必要になることがあります。


 

5. 廃業ではなく譲渡した場合の手続き・メリット

 

 ここまで見てきたように、税理士事務所の廃業には多くの手続きや負担が伴います。しかし、もう一つの選択肢として「M&Aによる譲渡」を検討することで、よりスムーズでメリットの多い引き際を実現できます。


M&Aのメリット



結論として、廃業は多くの手間とデメリットを伴う選択肢であり、可能であればM&Aによる譲渡を検討するのが賢明な判断となるでしょう。特に、顧客や従業員への影響を最小限に抑えたい場合には、M&Aが有効な選択肢となります。


M&A手続きの流れ


M&Aによる譲渡を行う場合、以下の手続きが必要です。

 

6. まとめ

 

 税理士事務所を廃業するという決断は、単なる業務の終了ではなく、多くの関係者に影響を及ぼす重要なライフイベントです。税理士登録の抹消手続きに始まり、顧問先との契約解除、税務署や自治体への各種届出、従業員の解雇、契約の整理など、やらなければならないことは多岐にわたり、精神的・時間的な負担も決して小さくありません。


こうした中で、「M&Aによる譲渡」という選択肢は、廃業に比べて多くのメリットを持っています。顧問先の継続性、従業員の雇用維持、資産の有効活用、そして引退後の資金の確保という観点からも、所長税理士自身にとっても、関係者にとってもより望ましい形と言えるでしょう。


もちろん、M&Aにも一定の手続きと時間は必要ですが、専門家の支援を受けることでスムーズに進めることができます。廃業または譲渡かの選択は一人ひとりの状況によって異なりますが、「どちらがより後悔のない道なのか」をしっかり見極めたうえで判断することが大切です。


今後の人生を見据えたとき、税理士として築き上げてきた事務所をどう終わらせ、どう次に引き継いでいくか。この記事が、その一助となれば幸いです。





















 

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