top of page

税理士事務所のM&Aは誰のため?所長自身の働き方を見直すという考え方

執筆者の写真: 小杉 啓太
小杉 啓太
12 分前
読了時間: 6分

 弊社には、税理士事務所の譲渡や承継について、さまざまなご相談が寄せられます。相談のきっかけとして多いのは、「自分に何かあったとき、職員や顧問先に迷惑をかけたくない」という思いです。


 一方で、「この働き方をいつまで続けられるのだろうか」「収入が少し下がっても、業務負担を減らしたい」といった、所長ご自身の今後の働き方に関する相談も少なくありません。


 税理士事務所のM&Aは、事務所を誰かに引き継ぐためだけのものではありません所長がこれからどのような人生を送りたいのか、働き方をどう変えたいのかを考えるための選択肢でもあります。



 税理士事務所を開業した当初は、顧問先の獲得から記帳入力、申告書の作成、顧客対応、請求、入金管理まで、ほとんどすべての業務を所長自身が担います


 顧問先が増え、職員を採用し、売上や所得が伸びていくことは大きな喜びです。自分がつくり上げた事務所が成長していく過程には、ほかでは得られない達成感があります。しかし、事務所の規模が大きくなっても、所長の業務負担が減るとは限りません


 入力業務や申告書の作成を職員に任せられるようになっても、最終的な確認は所長が行わなければならないことがあります。複雑な税務判断が必要な案件や、顧問先の経営に関わる重要な相談については、所長が対応するケースも多いでしょう。


 また、職員に担当を割り振っていても、昔からの付き合いがある顧問先から「所長に相談したい」と言われれば、対応せざるを得ません。長年の信頼関係があるからこそ、所長に相談が集中することもあります。さらに、税務業務以外にも、所長が担う仕事は数多くあります

 顧問先対応に加えて、組織マネジメントや採用、総務、経理まで所長が担当していると、自由な時間は少なくなります


「事務所の売上は増えたのに、休みは増えない」

「職員は増えたが、自分にしかできない仕事も増えた」

「この働き方を、あと何年続けられるのだろうか」


事務所が成長したからこそ、このような悩みを抱える所長もいます。



 仕事が忙しいこと自体が悪いわけではありません。仕事にやりがいを感じ、忙しく働くことを楽しんでいる所長もいるでしょう。重要なのは、現在の働き方を自分が望んでいるのかどうかです。


 本当はもう少し休みたいのに、顧問先対応があるため休めない。家族と過ごす時間を増やしたいのに、夜や休日も仕事をしている。旅行や趣味の予定を立てても、急な相談やトラブルでキャンセルになる。この状態が長く続くと、所得が増えていても、幸福度が高いとは限りません


 「収入を下げてでも、業務負担を減らしたい」という相談が出てくるのは、所長が仕事をしたくないからではないでしょう。これまで十分に働いてきたからこそ、これからは仕事以外の時間も大切にしたいと考えているのです。


 所長が責任を持ち続けることと、すべての業務を一人で抱えることは同じではありません。事務所の成長段階に応じて、所長の役割を変えていくことも必要です。


 開業当初は実務担当者として働き、規模が大きくなれば経営者として組織を整える。そして将来的には、後継者や他の税理士と協力しながら、所長自身の業務量を減らしていく。こうした変化を実現する方法の一つが、税理士事務所のM&Aです。



 税理士事務所のM&Aというと、「引退するための手続き」と考えられがちです。しかし、完全に仕事を辞めるのではなく、統合先と協力して業務を分担するために税理士事務所のM&Aを検討するケースもあります。


 たとえば、所長が一人で顧問先対応を行っている事務所があるとします。入力業務や申告書作成は職員に任せていても、電話や面談、税務相談はほぼすべて所長が対応している状態です。


 税理士が複数名在籍する税理士法人と統合すれば、顧問先対応を分担できる可能性があります。所長が不在のときも、他の税理士が相談に対応できる体制を整えやすくなります。期待できる変化として、次のようなものがあります。

 もちろん、統合すればすぐにすべての業務がなくなるわけではありません。顧問先との信頼関係を維持するため、一定期間は所長が今のまま顧問先と関与することもあります。


 しかし、所長だけが対応する状態から、複数の税理士や担当者が協力する体制に変われば、所長の負担を徐々に減らせます。拠点や職員の雇用を維持しながら、所長の役割だけを少しずつ変えていく方法もあります。



 小規模な税理士事務所では、採用、総務、経理などを所長が直接行っていることも少なくありません。職員を採用したいと思っても、求人広告の作成、応募者との連絡、面接、採用条件の決定まで、すべて所長が担当します。職員が入社した後も、給与計算、勤怠管理、備品の発注、請求書の作成などが続きます。一つひとつは小さな仕事でも、こうした業務が積み重なると、顧問先対応に集中する時間を奪います


 例えば、大手の税理士法人などと統合し、本部の機能を活用できれば、次のような業務を本部で対応できる場合があります。

 こうした業務を本部に任せることで、所長は顧問先との関係づくりや、経験を活かした相談対応に集中しやすくなります。これは、所長が責任を放棄するということではありません。所長にしかできない仕事に時間を使うために、組織として業務を分担するという考え方です。



 税理士事務所のM&Aを検討するとき、多くの所長は「職員のため」「顧問先のため」と考えます。もちろん、職員や顧問先を守ることは大切です。しかし、所長自身の健康や家族との時間も同じように大切です。


 また、税理士事務所のM&Aは検討を始めてすぐに実行できるものではありません。統合先の選定や条件調整、職員・顧問先への説明など、一定の準備期間が必要になります。だからこそ、体力や気力に余裕があり、事務所の経営も安定している段階から、将来の選択肢として考えておくことが大切です。


 元気なうちに準備を始めることで、「M&A後も5年間は働きたい」「週3日程度に減らしたい」「顧問先対応だけは続けたい」など、自分が希望する働き方についても統合先と相談しやすくなります



 税理士事務所のM&Aは、「続けるか、辞めるか」の二択ではありません。顧問先対応は続けながら、申告業務の確認を他の税理士に任せる。週5日の勤務を週3日にする。数年間かけて担当する顧問先を減らし、その後に引退する。このように、働き方を段階的に変えていくことも可能です。大切なのは、「M&Aをするか、しないか」から考えることではありません。


「あと何年働きたいのか」

「どの仕事は続けたいのか」

「どのくらい自分の時間を増やしたいのか」


 まずは、これから自分がどのように働きたいのかを整理してみる。そのうえで、今の事務所の体制では実現が難しいのであれば、その希望を実現する方法の一つとしてM&Aを検討することもできます。 


 税理士事務所をここまで成長させてきたことは、所長にとって大きな実績です。これまで築いてきた事務所を次の世代につなぎながら、所長自身の働き方を少しずつ変え、ご家族との時間や自分のための時間を増やしていく


 税理士事務所のM&Aは、職員や顧問先を守るためだけではありません。所長自身がこれからどのように働き、どのような時間を過ごしていきたいのかを考えるうえでも、一つの選択肢になり得るのではないでしょうか。



事業継続のためのM&A支援

コメント


ロゴWhite.png

​税理士M&A

成功ガイド

powered by KACHIEL

私たちについて

KACHIELは税理士向け実務セミナー事業を15年以上運営し、全国に2.4万人以上の税理士ネットワークをもつ会社です。弊社をご利用いただく税理士事務所の所長・税理士法人の代表であるお客様などから過去通算100件以上、事務所承継や組織化のご相談をいただいております。

単なる「売却」に限らず、譲渡側の所長の現役続行を前提とした「支店成り」「税理士法人化」「税理士法人合併」などのご支援を全国で多く行っています。

​これまで弊社ご支援先ではM&Aを原因とした職員様の離脱が過去通算0人です。

​税理士M&A成功ガイドで公開する知識・経験談をご参考にしていただけますと幸いです。

© 2026 KACHIEL Inc. All rights reserved.

株式会社KACHIEL

代表取締役 久保 憂希也

〒105-0022 東京都港区海岸1-4-22 SNビル4階

中小企業庁登録M&A支援機関
設立  2009年2月

資本金 9億3,850万円 (うち資本剰余金 8億3,850万円)

MAIL mainfo@kachiel.jp 

TEL   03-5422-6166(平日 9:00~18:00)

bottom of page