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税理士は何歳まで働く?年代別に見る承継準備の進め方

  • 執筆者の写真: 小杉 啓太
    小杉 啓太
  • 6月12日
  • 読了時間: 7分

 税理士事務所の所長にとって、「いつまで働くのか」「いつ引退するのか」というテーマは、避けて通れない重要な課題です。税理士という職業は、他の職種と比べて年齢の制約が少なく、長く現役を続けられる点が大きな特徴です。その一方で、年齢とともに健康面や経営面のリスクも高まるため、早い段階から将来像を描いておくことが重要になります。本記事では、税理士の働き方と引退の実態、そして年代別の承継方法について、弊社へのご相談事例をもとに解説します。



 税理士業界は平均年齢が高いと言われており、実際に70代・80代でも現役で活躍している税理士は珍しくありません。税理士は専門知識と経験が価値となる職業であるため、年齢を重ねても顧問先との信頼関係を維持しながら仕事を続けられる点が強みです。そのため、「できる限り長く働きたい」と考えている税理士が多くいます


 一方で、税理士として長く働けるからといって、無制限に働き続けられるわけではありません。年齢を重ねると、体力や集中力の低下、判断力の衰えなど、さまざまな変化が生じます。特に税理士は顧問先の重要な意思決定に関わるため、こうした変化が業務品質に影響する可能性もあります。


 税理士事務所の承継支援の現場においても、相談を受ける税理士の年齢は幅広く、40代の税理士から80代の税理士までさまざまです。その中でも特に多いのが50代後半から60代前半の税理士です。この年代になると、体力や将来の見通しを意識し始め、「このまま同じ働き方を続けてよいのか」と考える税理士が増えてきます。


 引退時期について尋ねると、「生涯現役でいたい」と考える税理士も一定数存在します。しかし実際には、「65歳くらい」「70歳くらい」「75歳くらい」といった漠然としたイメージはあるものの、明確な引退年齢を決めている税理士は少数です。これは税理士という職業が自由度の高い働き方であることの裏返しとも言えます。


 一方で、お子さんやお孫さんの年齢、引退後の生活資金などを踏まえて、ある程度の引退時期を意識し始める税理士もいます。しかし、「仕事をしなくなった後に何をするのか」が明確でないため、具体的に引退をイメージできず、結果として判断を先送りにしてしまうケースも少なくありません。


 また、税理士は仕事中心の生活を長年続けてきた方が多く、引退後の生活像を描きにくいという特徴があります。そのため、明確な引退時期を定めないまま、結果として現役を続けるという選択を取る税理士も多いのが実情です。


 実際に、税理士業界に限らず、早期に引退した経営者が「時間ができて良かった」と感じる一方で、次第に時間を持て余し、再び仕事に戻るというケースもよく見られます。このように、税理士の引退は単に年齢だけで決めるものではなく、「引退後の生活設計」と密接に関係しています。



 税理士事務所の承継は、検討を始める年代によって取れる選択肢や準備期間が大きく異なります。そのため、税理士は自身の年齢に応じた適切なタイミングで承継を考えることが重要です。ここでは、年代別に税理士の承継の考え方を整理します。


 まず40代の税理士の場合、まだ現役として働ける期間が長く、直ちに引退を意識する段階ではありません。しかし近年では、税理士業界においても働き方の多様化が進み、新たな分野への挑戦や、親から事務所を承継したものの経営に違和感を持ち、改めて事務所の承継を検討する税理士もいます。


 この年代の税理士にとって重要なのは、「まだ早い」と考えずに、うっすらでも出口を意識しておくことです。税理士事務所は顧問契約を中心としたビジネスモデルであり、信頼関係の引き継ぎには時間がかかります。後継者の育成にも数年単位の時間を要するため、準備が遅れるほど選択肢は狭まります。


 そのため、40代の税理士は事務所の成長と並行して、後継者候補の育成や組織体制の整備に着手することが望ましいと言えます。早い段階から準備を進めることで、将来的に親族承継、所内承継、第三者への譲渡といった複数の選択肢を柔軟に選べる状態を作ることができます。


 次に50代の税理士は、承継を具体的に検討し始めるべき重要なタイミングに入ります。この年代になると、体力や気力の変化を感じる税理士も増え、「今の働き方をいつまで続けるのか」を現実的に考える時期に差し掛かります。実際に、税理士の承継相談が最も多いのが50代後半の税理士です。


 50代の税理士は、まだ時間的な余裕がある一方で、ここでの判断が将来を大きく左右します。このタイミングで動き出すかどうかによって、選べる承継方法や条件が変わるため、慎重かつ計画的な検討が求められます。


 この年代の税理士は、親族承継、所内承継、第三者への譲渡といった各選択肢を比較しながら、自身の価値観や事務所の状況に合った方法を選択することが可能です。また、早めに準備を始めることで、顧問先や職員への影響を抑え、円滑な引き継ぎを実現しやすくなります。


 60代の税理士になると、承継は「検討」から「実行」の段階へと移行します。この年代の税理士は、具体的な引退時期を意識しながら、現実的なスケジュールのもとで承継を進めていく必要があります。


 税理士として長年築いてきた顧問先との信頼関係や実務経験は大きな強みですが、一方で時間的な余裕は限られてきます。承継には一定の準備期間が必要であるため、数年単位での計画を立て、着実に進めていくことが重要です。


 また、この段階の税理士にとって重要なのが、承継後の働き方の設計です。引き続き税理士として関与するのか、それとも徐々に業務量を減らしていくのかによって、承継の進め方も変わります。実際には、「完全に引退するのではなく、一定期間は関与を続けたい」と考える税理士が多く、段階的に役割を移行していくケースが一般的です。


 70代以上の税理士の場合、承継は優先度の高い経営課題となります。この年代の税理士は、健康面のリスクが高まり、突発的に業務継続が困難になる可能性も否定できません。そのため、できる限り早期に承継の具体化を進めることが重要です。


 特に準備が不十分なまま引退を迎えた場合、顧問先への対応や職員の雇用維持に影響が出る可能性もあります。税理士として長年築いてきた事務所を守るためにも、計画的な承継が求められます。


 一方で、この年代でも現役として働き続けたいと考える税理士は多く存在します。そのため、承継後も一定期間は税理士として関与し続ける形を選択することが現実的です。無理に引退するのではなく、役割や責任を段階的に移行していくことで、顧問先や職員に安心感を与えながら、円滑な承継を実現することができます。



 税理士の引退と承継を円滑に進めるためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず重要なのは、「引退後の生活を具体的にイメージすること」です。旅行や趣味に時間を使いたい、別の分野に挑戦したいなど、明確な目標がある税理士は、引退時期も自然と定まります。逆に、漠然と「ゆっくりしたい」と考えているだけでは、なかなか決断ができません。


 また、「健康年齢」を意識することも重要です。税理士として働ける年齢と、自由に活動できる年齢は必ずしも一致しません。元気に動けるうちにやりたいことを実現するためには、早めの準備が必要です。


 さらに、税理士事務所の承継は、自分自身だけでなく、職員や顧問先にも大きな影響を与えます。多くの税理士が共通して持っているのは、「自分の引退後も職員の雇用を守りたい」「顧問先に迷惑をかけたくない」という思いです。この思いを実現するためには、計画的な承継が不可欠です。


 特に、所長である税理士が高齢になると、顧問先が不安を感じるケースもあります。「この税理士はいつまで担当してくれるのか」という不安は、顧問契約の継続にも影響を与えかねません。そのため、早い段階で承継の方向性を示すことが、信頼関係の維持にもつながります。


 税理士の引退に「正解」はありません。しかし、何も準備をしないままその時を迎えると、選択肢は大きく限られてしまいます。逆に、早い段階から承継を意識しておくことで、自分にとっても、職員にとっても、顧問先にとっても最適な形を選ぶことができます。


 税理士として長く活躍することは素晴らしいことですが、同時に「どのように終えるか」も同じくらい重要です。将来の自分を見据え、無理のない形で次の世代へつないでいくために、事務所の承継という選択肢を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。



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