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多くの税理士が知らない「引退しない」事務所の承継・M&A

  • 執筆者の写真: 小杉 啓太
    小杉 啓太
  • 4月29日
  • 読了時間: 5分

1. 税理士事務所のM&Aは誤解だらけ

 

 税理士事務所のM&Aについて、多くの税理士が誤解を抱いています。これらの誤解は、税理士事務所がM&Aを検討する際の障害となり、貴重な機会を逃す原因にもなりかねません。


 最も一般的な誤解の一つは、M&A後にすぐに引退しなければならないという考えです。しかし、実際にはそうではありません。多くの場合、所長である税理士がすぐに引退することは望まれていません。なぜなら、税理士事務所の価値は、その所長である税理士の経験、知識、そして顧問先との関係性にあるからです。M&A後も所長が残ることで、スムーズな事業継続が可能となり、顧問先との信頼関係も維持できるのです。


 また、M&A後に所長が残る場合、単なるサラリーマンになるわけではありません。これも大きな誤解の一つです。多くの場合、所長は重要な役割を担い続けます。例えば、譲受側の税理士法人の支店の社員税理士や顧問として事務所に関わり続けることができます。この継続的な関与は、税理士事務所の安定性と成長に大きく貢献します。


 さらに、「M&Aは事務所を売り払うこと」「M&A後は完全に手を引かなければならない」といった誤解も存在します。しかし、実際の税理士事務所のM&Aはもっと柔軟で、所長の意向を尊重した形で進められることが多いのです。M&Aは、税理士事務所の未来を築くための戦略的な選択肢の一つであり、必ずしも「引退」や「撤退」を意味するものではありません


 税理士として、これらの誤解を解消し、M&Aの本質を理解することが重要です。M&Aは、税理士事務所の継続と発展のための有効な手段の一つであり、慎重に検討する価値のある選択肢なのです。



2. 所長の引退は望まれない!?譲受側の立場で考えてみる


 譲受側にとって、所長の引退は必ずしも望ましいものではありません。むしろ、所長に残ってもらうことで大きなメリットがあります。


所長が引退を望まれない主な理由は下記です。


 

 譲受側にとって、所長が残ってくれるメリットは計り知れません。所長の経験と専門知識を活用することで、事務所の価値を最大化できるのです。例えば、複雑な税務案件への対応、重要顧客との関係維持、新規サービスの開発など、所長の継続的な関与が事務所の成長に大きく寄与します。


 また、所長が残ることで、M&A後の統合プロセスがよりスムーズになります。文化の違いや業務プロセスの調整など、M&A後に直面する課題に対して、所長の存在は大きな助けとなります。


 税理士事務所の所長は、自身の経験と専門知識が譲受側にとって大きな価値があることを認識し、M&A後の役割について前向きに検討することが重要です。引退ではなく、新たな形での貢献を考えることで、より魅力的なM&Aを実現できる可能性があるのです。



3. 譲渡後も現役続行する場合の待遇とは?


 M&A後の所長の立場と役割には、実はいくつかの選択肢があります。主な選択肢としては下記が挙げられます。



これらの役割は、所長の希望や譲受側のニーズに応じて柔軟に設定することができます。


 M&A後の所長の役員報酬については、個々の契約内容によって異なりますが、多くの場合、以前と同等かそれ以上の待遇が提供されます。報酬の構成も、固定給と業績連動型の組み合わせなど、柔軟な設定が可能です。


 また、報酬以外の待遇も重要な検討事項です。例えば、勤務時間の柔軟性、休暇制度、研修機会の提供など、所長のライフスタイルや将来のキャリアプランに合わせた条件を交渉することができます。


 税理士事務所の所長にとって、これらの選択肢を十分に理解し、自身の希望と譲受側のニーズをバランスよく考慮することが重要です。M&A後も充実したキャリアを続けながら、事務所の発展に貢献できる道筋を見出すことが可能なのです。



4. 職員・顧問先への影響は?


 M&Aを検討する際、税理士事務所の所長が最も懸念するのは、職員や顧問先への影響でしょう。所長がすぐに引退した場合、どのような問題が生じる可能性があるのか、詳しく見ていきましょう。


 職員にとっては、業務の引継ぎが不十分になる可能性や、顧問先とのコミュニケーションが難しくなるといった問題が生じる可能性があります。また、事務所の雰囲気や文化の急激な変化、キャリアパスの不透明化、専門的なアドバイスの不足なども懸念されます。


 一方、顧問先にとっては、長年信頼関係を築いてきた相談相手の喪失や、事業に関する詳細な知識の断絶といった問題が生じる可能性があります。新しい担当者との関係構築の負担、サービスの質の変化への不安、機密情報の取り扱いへの懸念なども考えられます。


 これらの理由から、M&A後も所長が一定期間関与し続けることが、職員と顧問先の双方にとって重要となります。所長の継続的な関与により、以下のようなメリットが期待できます。



 税理士事務所の所長は、これらの点を十分に考慮し、M&A後の関与の仕方を慎重に検討することが重要です。職員と顧問先への配慮は、M&Aの成功と事務所の継続的な発展に不可欠な要素なのです。



5. まとめ


 税理士事務所のM&Aに関する主な誤解をまとめると、M&A後は必ず引退しなければならない、M&A後は単なるサラリーマンになる、職員や顧問先への影響は小さい、M&A後の待遇は必ず悪くなる、M&Aは事務所を「売り払う」ことなどが挙げられます。


 しかし、実際には所長の継続的な関与が望まれることが多く、重要な役割を担い続けることができます。また、職員や顧問先への影響は大きいため、慎重な対応が必要です。適切な交渉により、同等以上の待遇を確保できる可能性もあります。


 M&Aは単なる事業売却ではなく、税理士事務所の成長と継続のための戦略的な選択肢として捉えることが重要です。実際のM&Aでは、所長の意向を尊重し、職員や顧問先への影響を最小限に抑えながら、事務所の価値を最大化することが目指されます。


 税理士事務所の所長は、これらの誤解を解消し、M&Aの本質を理解することで、より前向きにM&Aを検討できるようになります。M&Aは、所長の経験と専門知識を活かしつつ、新たな経営資源を得ることで、事務所のさらなる発展を実現する可能性を秘めているのです。


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