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職員や顧問先が"安心"できる税理士事務所のM&Aとは?

  • 執筆者の写真: 小杉 啓太
    小杉 啓太
  • 6月13日
  • 読了時間: 6分

 税理士事務所の所長にとって、事務所の将来を考えたときにM&A(合併・支店成り)は重要な選択肢の一つです。特に後継者問題や事務所の成長戦略としてM&Aを検討するケースが増えています。しかし、税理士事務所のM&Aは単なる事業譲渡ではなく、職員や顧問先といった「人」と「信頼」を引き継ぐ非常に繊細なプロセスです。所長としては、職員の雇用や顧問先の信頼を守りながら、スムーズに事務所を引き継ぐことが何よりも大切です。この記事では、税理士事務所のM&Aにおいて「職員や顧問先が安心できる」ために必要なポイントをわかりやすく解説します。



1.職員の雇用継続と顧問先の引き継ぎは前提


 税理士事務所の所長がM&Aを検討する際、最も大きな関心事は「職員の雇用を守りたい」「顧問先に迷惑をかけたくない」という点です。税理士として長年事務所を経営してきた所長の多くが、職員や顧問先の将来を第一に考えています。弊社サービスにご相談をいただく税理士事務所の所長の多くが同じような思いを抱いているおり、決して珍しいことではありません。


 M&Aの譲受側の税理士事務所も、「今まで通りの営業利益を維持したい」と考えているため、顧問先が離れることなく引き継がれることが前提となります。顧問先が離脱してしまえば、税理士事務所の価値が大きく下がってしまうため、譲受側にとっても顧問先の引き継ぎは極めて重要です。


 また、税理士事務所の業務を熟知し、顧問先と信頼関係を築いている職員の雇用継続も、譲受側にとって不可欠な条件です。職員の退職は顧問先の離脱につながるリスクが高く、税理士事務所のM&Aを成功させるためには、職員の継続雇用が大前提となります。


 このように、税理士事務所のM&Aは、譲渡側・譲受側の双方が「職員の雇用継続」「顧問先の円滑な引き継ぎ」を最優先事項として進めることで、関係者全員が安心できるM&Aの第一歩となります。税理士としての責任感を持ち、職員や顧問先の未来を守る姿勢が、信頼されるM&Aのベースとなるのです。



2.職員に安心してもらうために必要なこと


 税理士事務所のM&Aにおいて、職員の雇用が引き継がれることは前提ですが、「待遇が変わってしまうのではないか」「新しい組織でうまくやっていけるのか」と不安に感じる職員も多いです。税理士事務所のM&Aは、所長だけでなく職員の人生にも大きな影響を与えるため、職員の安心感を最優先に考えることが重要です。


 譲受側の税理士事務所にとっても、職員の離脱は大きなリスクです。既存社員とのバランスを考慮しつつも、基本的には現状の待遇が下がることはほとんどありません。むしろ、大手の税理士法人に加わる場合は、研修制度や報酬体系が改善されるケースも見受けられます。


 ただし、職員を守るためには「事業譲渡契約書」の内容をしっかり確認することが大切です。たとえば、


「従業員の雇用:乙は、本件事業譲渡以降最低〇年間は従業員の雇用を原則維持するとともに、譲渡日時点の労働条件を実質的に下回らないことを保証する」


といった条項が盛り込まれているかどうかをチェックしましょう。税理士事務所のM&Aでは、こうした契約内容が職員の将来を守る重要なポイントとなります。


 また、M&Aの最終契約を締結する直前に職員へ伝えるのではなく、できるだけ早い段階でM&Aの意向を共有することが望ましいです。新しい組織のメンバーも同席し、今後の方針や待遇について丁寧に説明することで、職員の不安を和らげることができます。税理士としての誠実な姿勢が、職員の信頼を得るカギとなります。


 さらに、定期的な面談や説明の場を設け、職員の疑問や不安に耳を傾けることも大切です。税理士事務所のM&Aは「人と人との信頼」が最も大切です。小さな不安や疑問にも真摯に向き合うことで、職員の安心感を高めましょう。



3.顧問先に安心してもらうために必要なこと


 税理士事務所のM&Aでは、顧問先への対応も極めて重要です。税理士と顧問先の関係は深く、担当者が変わることに対して不安を感じる顧問先も多いものです。税理士事務所のM&Aでは、顧問先の信頼を丁寧に引き継ぐことが大切です。


 そのため、所長や職員と新しい税理士が一定期間一緒に対応し、信頼関係を丁寧に引き継ぐことが重要です。顧問先への案内の方法やタイミング、説明の仕方にも細やかな配慮が求められます。税理士事務所のM&Aでは、顧問先が安心してサービスを継続できるよう、事前にしっかりと準備を行いましょう。


 職員の雇用が継続される場合、「変わるのは事務所の看板だけです。当面の間は今までと同じ拠点・メンバーで変わらず対応します」と伝えることで、顧問先の安心感は大きく高まります。税理士事務所のM&Aによって組織が拡大する場合は、「今までよりもパワーアップした形でサービスを提供できる」といった前向きな見せ方も有効です。顧問先にとっては、サービスの質が維持され、むしろ向上する可能性があることをしっかり伝えましょう。


 また、顧問先ごとに担当職員や業務内容を整理し、スムーズな引き継ぎができるようにしておくことも大切です。税理士事務所のM&Aは、顧問先の信頼を守るための「バトンリレー」です。信頼関係を丁寧に引き継ぎ、顧問先が安心して事業を継続できる体制を整えることが、所長としての大切な役割です。



4."安心"を届けるための準備


 税理士事務所のM&Aを成功させるために最も大切なのは、職員と顧問先の「安心」をしっかり届けることです。そのためには、以下のような準備が不可欠です。


 まず、M&Aの準備は、引退間際ではなく、できるだけ早い段階から始めることが重要です。十分な引き継ぎ期間を確保し、職員や顧問先が安心して新体制に移行できるようにしましょう。税理士事務所のM&Aは、早めの準備が成功のカギです。


 次に、業務の見える化です。顧問先へのサービスの質を維持し、職員が困らないようにするためには、事務所の業務を「見える化」しておくことが大切です。業務フローや担当者ごとの役割分担を整理し、誰が見ても分かる状態にしておくことで、スムーズな引き継ぎが可能となります。税理士事務所のM&Aでは、こうした業務の見える化が、安心感につながります。


 また、M&Aの候補先選びも重要なポイントです。今までと変わらないサービスを提供できる候補先と出会うためにも、早めの準備が欠かせません。税理士事務所のM&Aは、信頼できるパートナーを見つけることが成功の秘訣です。


 さらに、職員や顧問先には、「変わらないこと」をしっかり伝えましょう。大きな変化があると不安を感じやすいですが、「今まで通りの体制でサービスを提供し続けます」と伝えることで、安心感を与えることができます。税理士事務所のM&Aは、「変わらない安心」を届けることが最も大切です。



5.まとめ


 税理士事務所のM&Aは、所長にとっても職員や顧問先にとっても、大きな転換点です。しかし、「職員の雇用継続」と「顧問先の円滑な引き継ぎ」を前提に、早めの準備と丁寧な情報共有を行えば、すべての関係者が安心して新しい一歩を踏み出すことができます。


 税理士としての使命は、顧問先や職員の未来を守ることです。M&Aを活用することで、後継者問題や事務所の将来不安を解消し、事業の存続と発展を実現できます。税理士事務所のM&Aは、決して「終わり」ではなく、「新しいスタート」です。


 これからM&Aを検討する税理士事務所の所長は、職員や顧問先の安心を最優先に、信頼できるパートナーとともに準備を進めていきましょう。税理士事務所のM&Aは、あなたの想いを未来につなぐ大切な選択肢です。


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