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税理士事務所の承継・合併、顧問先に迷惑はかかるのか

  • 執筆者の写真: 小杉 啓太
    小杉 啓太
  • 5月22日
  • 読了時間: 7分

更新日:5月22日


1.税理士事務所のM&Aは顧問先を守るための選択肢


 近年、税理士事務所における承継や合併は、所長の高齢化や後継者不足を背景に増加しています。税理士業界では、長年にわたり築き上げてきた顧問先との信頼関係を守るため、事務所の承継や合併が重要な選択肢として注目されています。税理士事務所の承継や合併は、単に経営を引き継ぐだけでなく、顧問先の将来の安心を確保するための重要なプロセスです。特に、所長の引退後も顧問先が継続的に質の高いサービスを受けられるよう、細心の注意を払って準備を進める必要があります。


 税理士事務所の承継や合併を適切に行うことで、顧問先は新たな税理士を探す手間や不安から解放され、信頼関係が途切れることなく維持されます。さらに、合併によって事務所の規模が拡大すると、より多様な専門知識やサービスが提供可能となり、顧問先のニーズに柔軟に対応できるようになります。たとえば、法人税や相続税、資産税など、幅広い分野に強みを持つ税理士が在籍することで、従来よりも高い専門性を提供できるケースもあります。


 また、税理士事務所の承継や合併は、事務所の経営基盤を強化し、将来的な安定経営にも寄与します。税理士事務所の規模が大きくなることで、IT化や業務効率化の投資がしやすくなり、顧問先へのサービス品質向上にもつながります。こうした背景から、税理士事務所の承継や合併は、所長自身だけでなく、顧問先のためにも積極的に検討すべき選択肢となっています。


 一方で、税理士事務所の承継や合併を進める際には、顧問先に迷惑がかからないよう、慎重な準備と丁寧な引き継ぎが不可欠です。税理士事務所の承継や合併は、顧問先の信頼を守るための責任ある行動であり、事前にしっかりとした計画を立てることが求められます。税理士事務所の所長は、顧問先の立場に立ち、安心して今後も事務所を利用できる体制づくりを心がける必要があります。



2.顧問先に対する影響とは?


 税理士と顧問先の関係は、単なる業務委託や顧問の枠を超え、経営や財務に関する深い信頼関係に基づいています。税理士事務所の承継や合併によって担当者が変わる場合、顧問先は不安や戸惑いを感じることが少なくありません。特に、長年同じ税理士が担当してきた場合、突然の担当者変更は顧問先にとって大きなストレスとなります。


 担当税理士の変更に対する不安を軽減するためには、顧問先にしっかりと説明を行い、新しい担当者がどのようにサポートできるかを伝えることが重要です。また、変更に関する事前通知を行い、新しい担当者との信頼関係を早期に構築できるようにサポートすることが求められます。特に、新しい担当者が顧問先に対してどのような価値を提供できるかを伝え、顧問先の不安を取り除くことが必要です。


 税理士事務所の承継や合併においては、業務の連続性を保つための工夫も必要です。たとえば、旧来の担当者と新しい担当者が一定期間同席しながら業務を進めることで、顧問先との信頼関係を徐々に引き継ぐことができます。こうした段階的な引き継ぎによって、顧問先の不安を最小限に抑えることが可能です。


 税理士事務所の承継や合併は、顧問先にとっても新たなサービスや専門性を享受できるチャンスとなりますが、同時に不安や疑問も生じやすいため、税理士事務所側のきめ細やかな配慮が不可欠です。



3.承継・合併時に顧問先に迷惑をかけないためには


 税理士事務所の承継や合併を円滑に進め、顧問先に迷惑をかけないためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、承継や合併の事実を早めに顧問先へ伝えることが大切です。突然の連絡や事後報告では、顧問先に不信感を与えてしまいます。できるだけ早い段階で説明し、今後の流れや対応について丁寧に案内することで、顧問先の不安を和らげることができます。


 承継や合併の際には、顧問先に対して透明性の高い情報提供が求められます。具体的には、承継や合併の理由、今後の体制、サービス内容の変更点などを明確に伝えることが重要です。これにより、顧問先は安心して新しい体制を受け入れることができ、信頼関係の維持につながります。


 また、税理士事務所の承継や合併では、所長や職員が継続して雇用されるケースが多くあります。これにより、顧問先はこれまで通りの担当者や窓口で相談ができるため、業務の連続性が保たれます。拠点が変わらない場合は、今まで通りの場所で対応できることも強調しましょう。


 さらに、顧問契約書の適切な更新も重要です。承継や合併によって契約主体が変わる場合には、新たな契約書を作成し、顧問先と合意を取り直すことが必要です。これにより、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。税理士事務所の承継や合併では、契約内容の見直しや新たな合意形成を通じて、顧問先の権利と利益を守ることが欠かせません。顧問契約書を見直す際には、税理士法の以下の条文に基づいて内容を整えることが重要です。



 加えて、前所長や職員と新しい税理士が一緒に顧問先の打ち合わせに同席し、徐々に信頼関係を引き継いでいくことも有効です。こうした段階的な引き継ぎによって、顧問先は安心して新体制を受け入れることができます。税理士事務所の所長は、顧問先の不安や疑問に寄り添いながら、丁寧なコミュニケーションを心がけることが大切です。



4.顧問先に迷惑をかけないための戦略


 税理士事務所の承継や合併は、所長や職員、そして顧問先にとっても大きな転機となります。とくに顧問先に迷惑をかけないためには、事前準備や承継先の選定、引き継ぎのプロセスにおいて、細やかな戦略が欠かせません。税理士事務所のM&Aを成功させ、顧問先に迷惑をかけないために、所長が実践すべき戦略は以下のポイントです。


 

 税理士事務所のM&Aを円滑に進め、顧問先に迷惑をかけないためには、戦略的な準備が欠かせません。まず、顧問先のニーズを最優先に考えた承継先の選定が不可欠です。単に規模や知名度だけでなく、顧問先の業種や規模、特有の要望に対応できる税理士事務所を選ぶことが、顧問先の満足度を高める鍵となります。最適なパートナーを見つけることが、顧問先にとって大きなメリットとなります。


 また、税理士事務所の承継や合併は、早めの承継準備が不可欠です。短期間で進めてしまうと顧問先に混乱や不安を与えかねません。理想的には、数年前から計画的に準備を始めることが望ましいです。承継や合併の方針が固まった段階で、顧問先への情報開示や説明の機会を設けることが大切です。承継や合併の理由や今後の体制、サービス内容がどのように変わるのか、変更点がある場合はその詳細を丁寧に説明しましょう。


 さらに、事務所内部の業務フローの整備や属人性の排除は、承継後の混乱を防ぐための重要な施策です。これにより、誰が担当しても一定の品質を保ったサービス提供が可能となり、顧問先の信頼を損なうことなく、承継や合併後も顧問先の混乱を最小限に抑えることができます。


 そして、承継や合併の計画段階から、顧問先への説明やフォロー体制をしっかりと整えておくことも重要です。顧問先からの疑問や不安に迅速に対応できるような体制づくりが大切であり、こうした戦略的な取り組みによって、税理士事務所の承継や合併は、顧問先にとってもプラスになります。



5.まとめ


 税理士事務所の承継や合併は、単なる経営上の課題解決にとどまらず、顧問先の信頼を守り、より良いサービスを提供し続けるための重要な手段です。税理士事務所の所長自らが積極的に情報収集を行い、最適な承継方法を選択することが、顧問先の安心と満足につながります。


 今後も増加が見込まれる承継や合併の中で、顧問先に迷惑をかけないための丁寧な対応と計画的な準備が、税理士事務所の持続的な発展に寄与するでしょう。税理士事務所の承継や合併は、顧問先の将来を守るための責任ある選択肢であり、信頼される税理士事務所であり続けるための大切な取り組みです。



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