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税理士事務所の所長はいつから承継準備をするべきか

  • 執筆者の写真: 小杉 啓太
    小杉 啓太
  • 5月2日
  • 読了時間: 6分

更新日:5月2日


 税理士事務所の所長として日々の業務に追われていると、事務所の「承継」について深く考える機会はなかなか持てないものです。しかし、税理士業界全体で高齢化が進む中、事務所の将来を見据えた承継対策は避けて通れないテーマとなっています。所長自身も「自分がいつまで現役でいられるのか」「このまま事務所を続けていけるのか」といった漠然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。



1.税理士事務所の承継の選択肢


 税理士事務所の承継にはいくつかの選択肢があります。もっとも伝統的なのは親族内での承継です。例えば、息子や娘が税理士資格を取得し、事務所を引継ぐケースです。しかし、現代では親族に税理士資格を持つ人がいない、あるいは事務所経営に興味を持たない場合も多くなっています。


 そのため、長年事務所を支えてきた職員の中から税理士資格を持つ人材や、今後資格取得を目指す人材を後継者として育成するという方法も一般的になっています。所内の文化や顧客との関係が維持しやすい点が大きなメリットですが、職員のキャリアプランや意欲を見極める必要があります。


 さらに、親族や既存職員に適任者がいない場合には、外部から税理士を採用し、一定期間かけて事務所運営を学んでもらうという選択肢もあります。新しい視点やノウハウを取り入れられる反面、事務所の雰囲気や方針に馴染んでもらうための工夫が求められます。


 近年、特に増えているのがM&Aによる承継です。これは他の税理士事務所や税理士法人と合併したり、事務所を譲渡することで承継を実現する方法です。後継者不在の問題を根本的に解決できるだけでなく、事務所の価値を最大化したり、新たな成長機会を得られる点が注目されています。また、個人事務所を既存の税理士法人の支店として運営する「支店成り」も安定した経営基盤を得る選択肢として選ばれています。


 このように、税理士事務所の承継にはさまざまな方法があり、それぞれにメリットや課題があります。特に近年は、後継者の採用や育成が難しいことから、M&Aによる承継を検討する所長が増加しています。後継者問題が深刻化する前に、計画的に承継準備を始めることが、事務所の未来を守るために非常に重要です。

 

 本記事では、承継対策としてのM&A・事業譲渡における承継準備のタイミングについて詳しく解説していきます。



2.税理士事務所の承継準備はいつから始めるのが最適か


 税理士事務所の承継対策としてのM&A・事業譲渡における承継準備は、いつから始めるのが最適なのでしょうか。実際には、40代から50代の税理士の間で承継準備を意識し始める方が増えています。弊社が提供する「合併・承継候補先無料調査サービス」においても、昨年ご相談いただいた税理士事務所の所長のうち、35%以上が50代以下の方でした。これは、以前に比べて承継への意識が確実に高まっている証拠と言えるでしょう。


 「まだ元気だから大丈夫」「引退する時に考えればいい」といった考えで承継準備を後回しにしてしまう方も少なくありません。しかし、税理士事務所の承継を希望する所長が増加する一方で、譲受側の事務所の受け入れハードルも年々上がっています。譲受側の税理士事務所としては、職員や顧問先の引継ぎを円滑に行うために、「事務所譲渡後すぐの所長の引退は避けたい」「50代の先生からの譲渡相談を優先したい」といった声が多く聞かれます。


 実際、税理士事務所の引継ぎには5年以上かけて準備を進める方も珍しくありません。承継の準備は、思い立ったその時が動き出すべきタイミングです。早めに動くことで、譲渡先の候補や条件も広がり、より良い形で承継を進めることができます。税理士事務所の承継は、所長自身が「そろそろ考えようかな」と思ったその瞬間から始めるべきだと言えるでしょう。



3.早期に準備するメリット


 税理士事務所の承継準備を早期にスタートすることには、多くのメリットがあります。まず、早い段階から承継を計画している税理士事務所は、譲渡先の候補数が多く、より良い条件での承継が実現しやすくなります。譲受側の事務所も、余裕を持って引継ぎができる事務所を優先する傾向が強まっており、結果的に所長の希望に近い形で承継を進めることができるのです。


 また、承継に伴う譲渡対価の受け取り方法の選択肢が広がります。例えば、一時金の受け取りだけでなく、分割払いなどを選べる場合もあります。税務面での負担軽減など、税理士としても見逃せないメリットがあります。早めに準備することで、税理士事務所の価値を最大限に引き出し、税負担を抑えるための選択肢を広げることが可能です。税理士事務所の承継は、単なる事業の引継ぎではなく、税理士としての知識や経験を活かした最適なプランニングが求められます。


 さらに、時間をかけて丁寧に引継ぎを行うことで、職員や顧問先の不安を和らげ、離脱リスクを最小限に抑えることができます。顧問先や職員が安心して新体制に移行できるようにするためには、十分な準備期間が不可欠です。加えて、所長自身にも心身の余裕が生まれ、急な体調不良や予期せぬ事態にも柔軟に対応できる体制を整えることができます。


 税理士事務所の承継を早期に準備することは、所長自身だけでなく、事務所全体、さらには顧問先や職員にとっても大きなメリットとなるのです。



4.承継後の事務所運営を考えての経営戦略


 税理士事務所の承継は、単に事務所を譲渡すれば終わりというものではありません。承継後の事務所運営をどうするかという点も、所長としてしっかり考えておく必要があります。顧問先や職員がこれまで通り安心して業務を続けられるようにするためには、承継計画を早めに立てておくことが不可欠です。


 承継後の新しい経営者がスムーズに事務所運営を引継げるよう、業務マニュアルやノウハウの整理、顧問先情報の共有など、事前の準備が求められます。税理士事務所の承継は、専門性の高いサービスを継続するための「バトンタッチ」です。承継後も、旧所長が一定期間アドバイザーや相談役として関わることで、顧問先や職員の不安を和らげ、円滑な移行を実現できます。


 また、承継を機に事務所の業務効率化や新サービスの導入など、経営戦略を見直すチャンスでもあります。新しい税理士の視点やノウハウを活かし、事務所の更なる発展を目指すことができるのです。事務所を承継した後も、顧問先や職員を守り、事務所運営を安定させるためには、早期の計画が非常に重要です



5.まとめ


 税理士事務所の承継は、所長としての大きな決断であり、事務所の未来を左右する重要なテーマです。早めに承継準備を始めることで、選択肢が広がり、より良い条件での承継が可能となります。税理士業界の高齢化や後継者不足が深刻化する中、計画的な承継準備は、顧問先や職員を守り、事務所の信頼と価値を次世代につなぐために欠かせません。


 承継には親族内承継、職員育成、外部採用、M&A、法人化など多様な選択肢があり、最適な承継準備を始めるタイミングは「今」です。M&A・事業譲渡における承継準備の場合は、早期準備によって譲渡先候補や条件、税務面での選択肢が広がり、丁寧な引継ぎで職員や顧問先の離脱リスクも抑えられます。承継後の運営戦略も見据えた計画が、事務所の発展と安定につながります。


 税理士事務所の所長として、事務所と関係者の未来を守るためにも、ぜひ早めの承継準備を始めてください。税理士事務所の承継は、未来への「投資」です。今こそ一歩を踏み出しましょう。



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