「小規模だから無理」は誤解?税理士事務所M&Aでよくある疑問
- 小杉 啓太

- 1 日前
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更新日:1 日前
税理士事務所のM&Aを検討される所長の方から、初回相談時に多く寄せられる質問や誤解があります。とくに小規模な税理士事務所を運営されている方や、地方で活動されている税理士の方ほど、「自分の事務所でも本当に譲渡できるのか」と不安を感じやすい傾向があります。
本記事では、税理士事務所のM&Aにおいて、実際によくある質問を取り上げながら、その背景にある誤解や実務的な考え方について、解説します。所長として長年築いてきた事務所をどのように次につなげていくか、その判断の一助となれば幸いです。
税理士事務所のM&Aを検討する際、ご質問いただく不安の一つが「自分の事務所は規模が小さいから難しいのではないか」という点です。
しかし実務の現場では、小規模の税理士事務所でもM&Aが成立している事例は少なくありません。例えば、所長1名・職員1名の税理士事務所であっても、十分に譲受側の候補先が見つかるケースがあります。ここで重要なのは、「すべての譲受側の事務所が大規模な税理士事務所だけを求めているわけではない」という点です。
例えば、すでに一定規模の税理士事務所を運営しているものの、無理に拡大するのではなく、自分たちの体制に合った範囲で顧問先を増やしたいと考えている譲受側の事務所もいます。また、地域や業種のバランスを整えたいという理由から、小規模でも特徴のある税理士事務所を求めているケースもあります。
さらに、税理士事務所としての価値は単純な売上規模だけで決まるものではありません。長年築いてきた顧問先との信頼関係、安定した契約、特定の業種への知見などは、規模に関わらず評価される重要な要素です。
したがって、「小規模だから無理」と決めつけてしまうのは適切ではありません。税理士事務所のM&Aにおいては、自事務所の規模に合わせて、適切な譲渡先を探すことが基本的な考え方となります。
次に、「地方にある税理士事務所でもM&Aは可能なのか」というご質問です。都市部に比べて人口が少ない地域では、税理士事務所のM&Aは難しいのではないかと感じる方も多いでしょう。
しかし、この点についても実務上は必ずしも不利とは限りません。むしろ、地方であることが評価されるケースもあります。
現在、税理士業界では都市部への集中が進む一方で、「特定の地域に拠点を持ちたい」と考える税理士事務所も一定数存在します。これは、自力で新規開拓を行うことの難しさが背景にあります。特に、既存の顧問先との関係構築には時間がかかるため、ゼロから開拓するよりも、既に顧問先を有している税理士事務所をM&Aしたいと考えるのです。
つまり、「出していない地域に出したい」というニーズが存在します。このような譲受側の事務所にとって、地方にしっかりとした基盤を持つ税理士事務所は、非常に魅力的な選択肢となります。
また、地方の税理士事務所は、顧問先との関係が密であり、長期的な取引が多い傾向があります。これは、M&A後の安定性という観点から見ると、大きな強みです。
もちろん、人口減少や地域経済の影響といった課題は存在しますが、それは都市部でも同様に別の形で存在しています。重要なのは、その地域における税理士事務所としての役割や、顧問先との関係性です。
したがって、「田舎だから無理」と考えるのではなく、「その地域に価値を感じる候補先がいる」という視点を持つことが大切です。
税理士事務所のM&Aを考える際、「十分な利益が出ていないと難しいのではないか」という不安もよく聞かれます。たしかに、譲受側の事務所の立場からすれば、利益が出ている税理士事務所の方が望ましいのは事実です。
しかし、実務上は「利益が大きく出ていなければならない」というわけではありません。重要なのは、継続的に顧問契約が維持されているか、そして赤字状態ではないかという点です。
ただ、極端に利益が低い、所得がほとんど出ていない税理士事務所の場合、そのままの体制を維持することが難しいケースはあります。人員配置や報酬体系の見直しが必要になることもあります。
また、税理士法人では、内部留保(純資産)をあえて残さないように調整しているケースもあります。役員報酬を高めに設定するなどして、結果的に利益が出ていないように見えることも珍しくありません。このような場合、表面的な利益だけで判断するのは適切ではありません。
譲受側の事務所が重視するのは、むしろ顧問先の質や継続性、料金体系の妥当性、業務の引き継ぎやすさといった点です。つまり、「今のまま引き継いで運営できるか」という視点です。
したがって、利益が大きく出ていないことだけを理由に、税理士事務所のM&Aを諦める必要はありません。むしろ、現状を正しく整理し、どのような改善余地があるかを示すことが重要です。
最後に非常に多いのが、「M&A後は引退しなければならないのか」というご質問です。特に長年、所長(税理士)として活動してきた方にとって、いきなり現場から離れることに抵抗を感じるのは自然なことです。
結論から言えば、税理士事務所のM&A後も現役を続けることは十分可能です。むしろ、譲受側の事務所多くは、M&A後も一定期間、譲渡側の所長に関与してもらうことを希望しています。
一般的には、少なくとも1年以上は継続して関与し、その後も状況に応じて長期間関わるケースもあります。なかには、生涯にわたって一定の形で関与し続ける譲渡側の所長もいらっしゃいます。
ここでよくある誤解が、「M&A後に現役を続けるとサラリーマンのように管理されるのではないか」というものです。しかし、実際にはそのようなケースは多くありません。
譲受側の事務所は、現所長のこれまでの経験や顧問先との関係性を尊重しています。そのため、「これまで通り事務所運営をお願いします」というスタンスを取ることが一般的です。むしろ、細かく管理するのではなく、信頼して任せる形が多く見られます。
もちろん、組織としてのルールや方向性のすり合わせは必要ですが、それはあくまで円滑な運営のためのものであり、自由度が極端に制限されるものではありません。
税理士としての働き方は多様であり、M&A後も自分に合った形で関与を続けることが可能です。完全に引退するか、徐々にフェードアウトするか、あるいは長く現役を続けるかは、個々の意向に応じて柔軟に設計することができます。税理士事務所のM&Aは、「引退」だけを前提としたものではなく、「次の形への移行」と捉えることが重要です。
税理士事務所のM&Aに関する初回相談では、「小規模だから難しい」「地方だから不利」「利益が出ていないと無理」「引退しないといけない」といった不安が多く聞かれます。しかし、これらの多くは実務とはやや異なるイメージに基づくものです。
実際には、税理士事務所の規模や立地に応じたニーズが存在し、それぞれに適したM&Aの形があります。また、利益水準だけで判断されるわけではなく、顧問先との関係性や事務所の運営実態が重視されます。
さらに、M&A後の関わり方についても柔軟な選択肢があり、税理士としてのキャリアを継続することも十分可能です。重要なのは、先入観で判断するのではなく、自身の事務所の状況を正しく把握し、現実的な選択肢を知ることです。税理士として築いてきた価値は、適切な形で次へ引き継ぐことができます。まずは正しい情報をもとに検討を進めることが、納得のいく承継への第一歩となります。




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