職員がいない場合や職員の雇用継続が難しい税理士事務所M&Aの進め方
- 小杉 啓太

- 4 日前
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税理士事務所のM&Aというと、職員の雇用を守ることや、これまで通りの顧問先対応の体制を維持することが重視される場面が多いです。実際、弊社にご相談いただく税理士事務所の譲渡に関するご相談では、職員の雇用継続や、顧問先への今まで通りの対応を最優先に考えてのご相談が多いです。
職員の雇用継続を前提としている場合、拠点の継続や会計ソフトの継続など、今まで通りの体制を維持することが求められます。また、雇用条件等についても、現状のものから待遇が下がることがないように調整等が必要になります。こうした配慮は、顧問先を現場で担当している職員が抜けることによる顧問先の離脱を防ぐことにも繋がります。
譲受側の事務所にとっても、税理士事務所の職員としての勤務経験がある職員の離脱や、それに伴う顧問先の離脱は極力避けたいため、柔軟に対応していただける譲受側の事務所が多いのが現状です。
ただ、実際の税理士事務所のM&Aの現場では、職員の雇用を引き継がないケースもあります。職員がおらず、所長1人のみの体制の事務所の場合、あるいは、今までは職員がいたが、高齢に伴う規模の縮小で職員がいなくても顧問先の引継ぎや、今まで通りの顧問先対応を目的にご相談をいただくケースがございます。
こういったケースでは、どこまで「これまで通り」を維持できるか、どうすれば顧問先の不安を和らげられるか、という視点で進めることが、税理士としての責任ある選択になります。所長としては「どう引き継ぐか」を丁寧に考える必要があります。
職員のいない税理士事務所では、顧問先との関係が所長個人に強く結びついていることが少なくありません。そのため、顧問先は所長の交代に対して敏感であり、担当が変わること自体に強い不安を感じやすいため、引継ぎはより丁寧に行う必要があります。
譲渡側の税理士と後任の担当者と一緒に訪問をしたりしながら、信頼関係の構築が大切になります。単に契約を引き継ぐだけでは不十分で、譲渡側の税理士と後任の担当者が一緒に顧問先を訪問し、これまでの経緯や今後の対応方針を直接説明することで、顧問先の不安を和らげやすくなります。
また、会計ソフトや連絡方法、訪問の頻度などを急に変えないことも大切です。税理士事務所では、顧問先が「今まで通り」を重視する傾向が強いため、移行期はできるだけ現状に近い体制を維持するほうが安心感につながります。
税理士としての信頼は、長年のやり取りの中で築かれています。だからこそ、所長1人のみの税理士事務所であればあるほど、引継ぎでは書類だけでなく、日常的な対応の仕方や顧問先ごとの特徴まで丁寧に伝える必要があります。
税理士事務所のM&Aでは、職員の雇用継続が前提となるケースが多い一方で、譲渡のタイミングで職員が退職を希望されることもあります。職員の高齢化や体調面の事情、あるいは職員からの退職相談をきっかけに、所長が事務所の承継を検討し始めるケースも少なくありません。このような場合でも、可能な限り職員の方にも引継ぎにご協力いただくことが望ましいでしょう。
もちろん、継続しての勤務が難しいケースもあります。しかし、たとえ職員の主な業務が入力作業中心で、顧問先との直接的なやり取りが少なかったとしても、顧問先ごとの特徴や業務上の注意点は現場に蓄積されています。そのため、譲渡後に複数年の継続勤務が難しい場合でも、所長だけでなく職員の方にも一定期間引継ぎに関わっていただくのが理想的です。
職員は顧問先ごとの資料の出し方や確認のポイント、申告時期前に気を付けるべき事項など、業務を円滑に進めるためのノウハウを把握しています。こうした情報はマニュアル化されていないことも多く、表には見えにくいものですが、税理士事務所の承継においては非常に価値の高い情報です。後任の担当者や譲受側の事務所にとっても、大きな助けとなります。
このようなケースでも、顧問先に不利益が生じない形で承継を進めることが何より重要です。税理士事務所の承継では、職員数そのものよりも、「どのような注意点があるのか」を正確に引き継ぐことが、スムーズな承継につながります。
職員には最低でも1年ほど引継ぎに協力してもらえると安心です。税理士事務所では、月次、決算、年末調整、申告、個別相談や臨時の問い合わせなどが一年を通じて発生するため、数か月だけでは全体像をつかみ切れないことが多いからです。
もちろん、現実には1年の職員の雇用継続の確保が難しい場合もあります。その場合でも、できるだけ長く並走することが大切です。税理士事務所のM&Aは、形式上の契約だけでなく、顧問先が今後も安心して相談を続けられる状態を作れるかどうかが重要です。
職員が辞める事情があるとしても、顧問先対応を軽く扱ってよい理由にはなりません。むしろ、職員が抜けるからこそ、譲渡側の所長が前に出て説明し、後任の担当者と一緒に顧問先を支える姿勢を見せることが必要です。
税理士事務所のM&Aで一番大切なのは、顧問先が今まで通りに相談できるかどうかです。職員の継続雇用を前提としない場合でも、顧問先にとってはサービスの継続が何より重要であり、ここを丁寧に扱うことが税理士としての信頼につながります。税理士事務所のM&Aにおいて、顧問先の離脱を最小限に抑えるためには、計画的で丁寧な引き継ぎが不可欠です。
また、譲受側の事務所にとっても、顧問先が離脱しないことは重要です。税理士事務所のM&Aは、譲受側の事務所にとっても継続して顧問契約を任せてもらえるかどうかが大きな関心事であり、丁寧な引継ぎは譲渡側・譲受側の双方にとって大きなメリットになります。
職員がいない税理士事務所でも、職員の雇用継続を前提としない税理士事務所でも、最優先で考えるべきなのは顧問先の安心です。顧問先から見れば、長年付き合ってきた所長が変わることは大きな出来事であり、不安を感じるのは自然なことです。そのため、承継後に急激な変化が起きないよう配慮しながら進めることが重要になります。
実務では、譲渡側の所長と後任の税理士が一緒に顧問先を訪問し、これまでの経緯や顧問先ごとの特徴、今後の対応方針などを直接説明する方法が有効です。税理士の交代を単なる担当変更として伝えるのではなく、「これまで築いてきた関係を守るための引継ぎ」であることを丁寧に説明することで、顧問先の理解を得やすくなります。
また、譲受側の事務所にとっても、顧問先の離脱は避けたい課題です。そのため、引継ぎ期間の確保や顧問先対応は譲受側の事務所と協力しながら進めることにより、結果として顧問先にとっても安心感のある承継につながります。
職員のいない税理士事務所や、職員の雇用継続を前提としない税理士事務所のM&Aでは、条件面だけで判断しないことも重要です。顧問先が安心して相談を続けられるか、これまでの関係性を大切にしてくれるかという視点で候補先を見極める必要があります。
譲渡側の所長にとっては、長年築いてきた税理士としての信頼をどのように次の世代へつないでいくかが大きなテーマになります。職員がいないから承継が難しい、職員が残らないから不利だ、と考える必要はありません。顧問先本位で丁寧な引継ぎを行うことで、職員がいない税理士事務所でも、職員の雇用継続を前提としない税理士事務所であっても十分に承継を実現することができます。
税理士事務所のM&Aは、税理士の都合だけで進めるものではありません。顧問先にとって何が自然で、何が安心につながるのかを考えながら進めることが、結果として顧問先・譲渡側・譲受側の三者にとって納得感のある承継につながります。




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