税理士法人化のメリットとは?税理士法人化前に知っておきたいポイント
- 小杉 啓太

- 11 分前
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税理士事務所を税理士法人にすることには、個人事務所にはないメリットがあります。特に、支店を設置できること、複数の税理士で顧客を支えられること、将来の事業承継に備えやすいことは、税理士法人ならではの特徴です。
ただし、「税理士法人にすれば節税できる」「法人化すれば経営が安定する」と考えるのは適切ではありません。税理士法人のメリットは、設立しただけで自動的に得られるものではなく、組織運営の仕組みを整えて初めて生まれるものです。
税理士法人化を検討する際は、税務上の有利不利だけでなく、事務所をどのように成長させたいのか、どのように顧客を支えたいのか、将来誰に事業を引き継ぐのかを考える必要があります。
税理士法人のメリットとして、最も分かりやすいのが支店を設置できることです。
個人の税理士は、原則として2つ以上の事務所(拠点)を設けることができません。 そのため、1人の税理士が東京と地方に事務所を設け、同じ名称で業務を行うことには制限があります。
一方、税理士法人であれば、主たる事務所に加えて、従たる事務所を設置することができます。たとえば、東京の本店を所長(代表社員)が管理し、地方の支店を別の社員税理士が担当するという運営が可能です。
支店を設置すれば、地域ごとに顧客を獲得しやすくなります。地元の金融機関、商工会議所、他の士業、地域の経営者などとの関係も築きやすくなり、遠方まで毎回訪問しなくても、地域に密着したサービスを提供できます。
また、複数の税理士がそれぞれの地域を担当すれば、顧客から見ても相談しやすい体制になります。相続税に詳しい税理士、法人税に強い税理士、医療法人を多く担当する税理士など、地域ごとに専門性を生かすことも可能です。
ただし、支店を設置すれば、すぐに事業が拡大するわけではありません。定款への記載、登記、税理士会への届出などの手続が必要です。さらに、税理士法人の事務所には、その地域の税理士会に所属する社員税理士を常駐させる必要があります。
国税庁は、社員税理士が定款に定めた業務を、その税理士法人の事務所で常時執行できる状態にあることを、常駐の基本的な考え方として示しています。したがって、支店設置を考える際は、場所を確保するだけでは不十分です。支店を担当する社員税理士、職員の採用、顧客情報の管理、業務の確認方法、売上と経費の管理などを整える必要があります。
支店の名前だけが存在し、実際には本店の所長(代表社員)がすべての業務を行っている状態では、税理士法人としての組織性を十分に生かせません。支店を一つの事業拠点として機能させるための人員と管理体制が重要です。
税理士法人のもう一つのメリットは、複数の税理士が協力して顧客を支えられることです。個人の税理士事務所では、顧客との契約、税務判断、税務調査への対応、相続案件、職員の管理まで、所長1人に業務が集中しがちです。所長が病気やけがで業務を行えなくなった場合、顧客や職員が大きな不安を抱えることもあります。
税理士法人では、複数の税理士が業務に関与することが可能です。ある顧客を担当していた税理士が不在でも別の税理士が対応でき、顧客に対して継続的なサービスを提供しやすくなります。業務の内容に応じて担当を分ければ、一人の税理士がすべての分野を抱える必要もありません。
たとえば、通常の法人顧問はA税理士、相続税申告はB税理士、事業承継の相談はC税理士が担当するという分担が考えられます。複数の税理士が情報を共有すれば、顧客の複雑な相談に事務所全体で対応しやすくなります。
職員の育成という面でも、税理士法人にはメリットがあります。税理士を目指す職員に対し、将来は社員税理士を目指せるというキャリアを示しやすくなります。税理士資格を取得した職員を、所属税理士、社員税理士へと育成する道筋を作ることも可能です。
ただし、税理士法人にしただけで、組織的な業務運営が実現するわけではありません。所長(代表社員)だけが顧客との関係や案件の内容を把握している場合、法人化後も実態は個人事務所と変わりません。
税理士法人のメリットを生かすには、顧客情報、申告期限、過去の対応履歴、税務上の論点、報酬の状況などを、必要な範囲で社員税理士や他の職員に共有できる仕組みが必要です。重要な税務判断を複数の税理士で確認する体制も欠かせません。
また、社員税理士は、税理士法人の業務を執行する権利と義務を持ちます。社員を名義だけの存在にせず、業務管理や経営判断に関与してもらうことが、税理士法人の組織性を高めます。
税理士法人は、所長個人に依存しない事務所をつくるうえでも役立ちます。個人の税理士事務所では、所長が引退すると、顧客との契約、職員の雇用、事務所の名称、会計システムなどを一つずつ引き継がなければなりません。顧客が所長個人に付いている場合には、所長の引退と同時に顧客が離れるリスクもあります。
税理士法人であれば、法人として顧客との契約や業務の仕組みを維持しながら、社員税理士や代表社員を交代させることができます。後継者となる税理士を早めに社員として迎え、数年かけて顧客や職員を引き継ぐことも可能です。
事業承継を成功させるには、後継者を社員にする時期が重要です。所長(代表社員)が引退する直前に加入させるのではなく、早い段階から顧客への挨拶、担当業務の移管、職員の管理、経営会議への参加などを進める必要があります。
後継者が税理士資格を持っていない場合には、社員になることができません。子どもや親族に事業を引き継ぎたいと考えていても、その人が税理士でなければ、一般の会社の株式のように経営権をそのまま承継させることはできない点に注意が必要です。
また、社員税理士が死亡すると、税理士法人から退社することになり、持分払戻しの問題が生じる可能性があります。代表社員が大きな持分を持っている場合、死亡によって税理士法人に多額の支払義務が発生することもあります。
そのため、事業承継を目的として税理士法人を設立する場合には、後継者の加入方法だけでなく、代表社員の交代、社員の死亡時の処理、持分の評価、退職金の支給方法まで検討しておく必要があります。
税理士法人の手引や日税連のモデル定款は、設立時の参考になりますが、そのまま使えば十分とは限りません。 自分の税理士法人の社員数や事業承継の予定に合わせて、定款を見直すことが大切です。
税理士法人にすれば、必ず税金が安くなるわけではありません。税理士法人を設立すると、法人の利益と社員である税理士の報酬を分けて考えることになります。しかし、税負担が有利になるかどうかは、利益の水準、社員報酬の金額、社員数、社会保険料、事務所の維持費などによって変わります。
税理士法人化後は、法人の申告、社会保険の手続、会計処理など、個人の税理士事務所にはなかった事務負担も生じます。税理士法人の設立費用や登記費用、専門家への相談費用なども必要です。
社会保険についても、法人化によって加入関係が変わることがありますが、保険料負担が増える場合もあります。将来受け取る年金や職員の福利厚生を含めて判断する必要があり、「社会保険が有利になる」と一律に考えることはできません。
税理士法人を設立する目的が節税だけであれば、期待した効果が得られなかった場合に、設立や維持にかかる負担だけが残る可能性があります。
税理士法人化を検討する際は、まず「なぜ税理士法人にするのか」を明確にすることが大切です。支店を設置したいのか、複数の税理士で顧客を支えたいのか、職員を採用・育成したいのか、後継者に事業を引き継ぎたいのかを整理します。
そのうえで、税理士法人にした場合の利益と負担を比較します。税理士法人化によって得たいメリットが明確であれば、定款の内容、社員の役割、報酬の決め方、支店の管理方法も具体的に設計できます。
税理士法人は、単なる節税の器ではありません。税理士が協力して業務を行い、顧客に継続的なサービスを提供し、事務所を長く存続させるための組織です。税理士法人化のメリットを正しく理解し、自分の事務所の将来像に合った制度設計を行うことが、税理士法人を有効に活用する第一歩になります。




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