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税理士法人化すれば解決?税理士事務所の後継者不在問題

  • 執筆者の写真: 小杉 啓太
    小杉 啓太
  • 4月8日
  • 読了時間: 7分

更新日:4月14日

 

 

 税理士事務所の所長にとって、後継者問題は避けて通れない課題です。特に高齢化が進む中で、事業承継の方法として「税理士法人化」を検討される方も多いでしょう。しかし、税理士法人化が万能な解決策とは限りません。本記事では、税理士法人化の課題や後継者問題の具体的な解決策について詳しく解説します。


 

1. 税理士法人化後、解散も多い理由

 

 税理士法人化は、後継者問題を解決するための手段として注目されています。しかし実際には、税理士法人化後に解散してしまうケースも少なくありません。その理由を以下に整理します。


高齢な税理士同士での法人化

 税理士法人化を検討するタイミングとして、所長自身が60代~70代といった高齢の場合が一般的です。この年代の税理士同士が共同で法人を設立する場合、どちらかが引退を迎えた時点で法人の存続が難しくなることがあります。例えば、代表社員同士が同じ世代であれば、数年以内にどちらかが引退する可能性が高く、その際に事務所自体を維持することが難しくなるケースが多いです。

 実際の事例として、60代の税理士同士が共同で法人を設立し、数年後に一方が引退した結果、残った方が単独で運営を続けることが難しくなり、結局解散に至ったケースがありす。


目的が曖昧なケース

 「税理士法人化すればどうにかなるだろう」という漠然とした期待だけで進めてしまうと、根本的な問題解決には至りません。例えば、後継者を具体的に育成する計画や経営体制の強化がない場合、法人化しても承継問題は未解決のままとなります。さらに、税理士法人化によって組織形態は変わるものの、それによって業務効率や人材育成に直接的な改善が見られない場合もあります。


税理士法人化はうまくいかない?

 「税理士法人化はうまくいかない」という話を耳にしたことがある方もいるでしょう。この背景には、目的と解決策を具体的に考えずに進められたケースが多く含まれます。例えば、「承継対策として税理士法人化したものの、結局代表社員同士の引退時期が重なり解散せざるを得なくなった」という事例は少なくありません。このような失敗例から、「税理士法人化は意味がない」といった誤った認識につながることもあります。


 このように、税理士法人化は適切な準備や計画なしでは成功しづらいです。「ただ法人化すればいい」という考え方ではなく、長期的な視点で取り組む必要があります。


 

2. 承継対策としての税理士法人化に必要な要件

 

 事業承継を目的とした税理士法人化を成功させるためには、以下の3つの要件を満たすことが重要です。


1. 若い税理士を代表社員または社員税理士として迎える

 所長より10歳以上若い税理士を迎え入れることで、将来的な承継につながる可能性が高まります。年齢差があることで引退時期もずれ、スムーズな引き継ぎが可能になります。例えば、高齢者同士ではなく30代~40代の若手税理士を後継者候補として迎えることで、新しい視点や活力も加わり、事務所全体の成長にもつながります。


2. 資格者人数を増やす

 税理士資格者が3名以上になる体制を構築することもポイントです。資格者数が少ないと業務負担が集中しやすく、事業承継の準備期間中に運営が停滞するリスクがあります。また、資格者数が増えることで顧問先への信頼度も向上し、新規顧客獲得にもつながる可能性があります。


3. 後継者の経営力強化

 後継者となる若手税理士に経営力やマネジメント力を育成することも欠かせません。経営力とは単なる業務遂行能力だけでなく、人材管理や顧客対応力など幅広いスキルを指します。場合によっては経営経験豊富な人材を外部から採用し、支援役として配置することも有効です。また、このような後継者の人材育成には時間とコストも必要ですが、それ以上に長期的なメリットがあります。


 これらの要件を満たすことで、単なる法人化ではなく「承継可能な法人」として機能させることができます。


具体的な成功例

 一方で、成功例としては、若手税理士を積極的に採用し、経営力強化を図った結果、スムーズな承継が実現したケースがあります。例えば、40代の若手税理士を代表社員として迎え入れ、経営体制を強化したことで、事務所全体の成長を実現し、将来的な承継も安定したものとなりました。



 

3. 若手税理士を採用すれば承継問題は解決するのか

 

 若手税理士を採用することは、後継者問題への有効な対策となり得ます。しかし、その実現にはいくつかの課題があります。


採用ハードルの高さ

 まず第一に挙げられる課題は採用ハードルです。税理士資格者は全国でも限られた人数しかおらず、その平均年収も高額です。そのため、中小規模の事務所では予算面で採用が難しい場合があります。また地方の場合は特に若手税理士の確保が困難です。都市部への集中傾向もあり、人材不足に悩む事務所は少なくありません。


 例えば、日本全国で毎年合格する税理士試験合格者数(5科目到達者数)は約600名程度ですが、その中でも地方勤務希望者はごくわずかです。そのため地方で活動する事務所では、若手人材確保競争で不利になる場合があります。


経営力のある人材確保

 若手税理士を採用できたとしても、その人材に経営力やマネジメント力が備わっていない場合、事業承継は成功しません。ただ単に資格保持者というだけでは不十分であり、「経営者」として育成する視点が求められます。また、この育成プロセスには時間と労力が必要となり、それまで事務所運営全体への負担増加につながる可能性もあります。このように若手税理士採用だけでは課題も多く、一筋縄ではいかない現状があります。


地域差と採用難易度

 地域によっても採用難易度は大きく異なります。例えば、都市部では若手税理士の需要が高く、競争が激しい一方で、地方では人材が少なく、採用自体が難しい状況です。このような地域差を考慮して、採用戦略を立てることが重要です。


 

4. 採用による承継とM&Aによる承継の違い

 

 後継者問題への解決策として、「若手税理士の採用」と「M&A」による方法があります。それぞれの特徴と違いを以下にまとめます。


項目

若手税理士採用

M&Aによる承継

実現性

採用ハードルが非常に高い

比較的スケジュール通り進めやすい

選択肢

採用できる人材次第

複数候補から選べる

条件交渉

難しい場合が多い

条件・職員雇用・会計ソフトなど柔軟性あり


 若手税理士採用は可能性として魅力的ですが、その実現には非常に高いハードルがあります。一方でM&Aによる承継は現実的かつ柔軟性に富んだ選択肢と言えます。特に早期から検討することで、有利な条件で進められる可能性があります。またM&Aの場合、自身で候補先を選べるため、「どんな相手なら安心して任せられるか」という視点から進められる点も大きなメリットです。


 M&Aによる承継には、以下のような具体的なメリットがあります。


 ・スケジュール管理の柔軟性

  M&Aでは、承継スケジュールを自由に設定できるため自身の引退計画に合わせて

  進めることができます。


 ・経済条件の交渉

  経済条件や職員の雇用継続、会計ソフトの利用継続など、具体的な条件を交渉する

  ことが可能です。


 複数候補からの選択

  複数の候補先から選べるため、最適なパートナーを見つけることができます。


 

5. まとめ

 

・高齢な税理士同士で税理士法人化しても時間の問題で解散することになる


・若手税理士の採用は、よほど魅力的な税理士法人でなければ

 承継スケジュールを立てられない


・仮に税理士資格者を採用できても、経営・マネジメント力がなければ

 事業承継は実現しない


・採用力が無い事務所であれば、早期にM&Aを検討したほうが

 所長自身・職員・顧問先にとってより良い選択をできる


 税理士事務所の後継者問題は単純な問題ではありません。複数の選択肢を検討し、自身の状況に最も適した方法を選ぶことが重要です。特にM&Aは、現実的かつ柔軟性に富んだ選択肢として注目されています。早期に検討し、最適なパートナーを見つけることが成功への鍵となります。



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