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税理士事務所のM&Aにおいて仲介会社を使う?使わない?

  • 執筆者の写真: 小杉 啓太
    小杉 啓太
  • 6月30日
  • 読了時間: 8分

 税理士事務所の所長として日々業務に取り組んでいると、ふと「そろそろ事務所の今後も考えないと…」と感じる瞬間が訪れることがあります。事業承継や引退、あるいは新たなステップを踏み出すために、M&Aという選択肢が頭をよぎる方も増えてきました。税理士業界でも、M&Aは決して珍しいものではなくなりつつあります。しかし、いざ自分がM&Aを検討する立場になったとき、「誰に相談すればよいのか」「仲介会社を使うべきか、それとも自分で進めるべきか」といった悩みが次々と浮かび上がってきます。この記事では、税理士事務所の所長がM&Aを検討する際に直面しやすい課題や、仲介会社を使う場合・使わない場合のメリットや注意点、そして仲介会社選びのポイントをわかりやすく解説します。



1.知り合いの税理士に相談できる?できない?


 M&Aを検討し始めた税理士事務所の所長が最初に悩むのは、「誰に相談すればよいのか」という点です。税理士という職業は、地域ごとのつながりが強く、同じ支部や市内・県内の税理士同士で顔見知りというケースも多いものです。そのため、「身近な税理士には相談しにくい」「情報が広まるのが怖い」と感じる方は少なくありません。実際、私たちKACHIELにも「同じ支部の税理士には絶対に知られたくない」「市内や県内の税理士には相談したくない」というご相談が多く寄せられています。


 税理士事務所のM&Aは、最終的に成立すれば良いものの、検討段階で情報が漏れてしまうことに強い抵抗感を持つ方が多いのが現実です。特に、事務所の職員や顧問先、取引先など多くの関係者に影響を与える可能性があるため、情報管理は非常に重要です。知り合いの税理士に相談した場合、本人の意思とは関係なく情報が広まってしまうリスクも否定できません。


 また、当事者同士が近しい関係であるからこそ、条件の調整が難航するケースもよく見受けられます。知り合い同士だと、どうしても感情が入りやすく、事務的な条件交渉がしづらくなります。お互いの関係を壊したくないという思いから、遠慮が出てしまったり、逆に感情的な対立に発展してしまったりすることもあるのです。税理士事務所のM&Aは、職員の雇用や顧問先の引き継ぎ、報酬体系の調整など、実務的な課題が多く発生しますが、知り合い同士で進める場合、こうした課題の調整がより一層難しくなる傾向があります。


 このように、知り合いの税理士に相談することにはメリットもありますが、情報管理や感情面、実務面での課題も多いため、慎重な判断が求められます。



2.M&A仲介会社を使わない選択肢


 「M&A仲介会社を使わずに、自分で進めたい」と考える税理士事務所の所長も少なくありません。特に、周囲の目や情報漏洩を気にしない方や、支部活動やセミナーなどで同業の知り合いが多い方は、直接相談しやすい環境にあります。税理士業界では、支部ごとのつながりや、税理士向けのセミナーやイベントを通じて、同業者同士のネットワークが築かれていることも多いです。そのため、M&A仲介会社を介さずに、直接知り合いの税理士に相談したり、候補者を自分で探したりすることも十分に可能です。


 M&A仲介会社を利用した場合、仲介手数料が数百万円に上ることもあり、そのコストは決して小さくありません。自分の事務所の現状をしっかり把握し、M&A後にやりたいことが明確で、「この人にしかお願いできない」といった譲渡先候補が既にいる場合は、自分で直接交渉するのも一つの方法です。実際、すでに信頼関係が築かれている相手がいる場合や、事務所の規模や状況が特殊で、一般的な仲介会社では対応しきれない場合などは、自力でM&Aを進める方もいます。


 しかし、契約内容や手続きに抜け漏れが生じやすく、価格や条件の妥当性を自分で判断しなければならないという難しさもあります。税務以外にも法務・労務など多岐にわたる専門知識が必要となり、こうした知識が十分でない場合は、思わぬトラブルに発展するリスクも否定できません。特に、税理士事務所のM&Aは、職員の雇用継続や顧問先の引き継ぎ、報酬体系の調整など、実務的な課題が多く発生します。こうした課題を自力で全て解決するのは、相当な労力とリスクを伴います。


 そして、客観的な第三者がいないため、条件交渉が行き詰まったり、後々トラブルに発展する可能性も否定できません。M&Aは一生に何度も経験するものではないため、慎重な対応が求められます。自分で進める場合は、必要に応じて弁護士や社労士などの専門家にアドバイスを求めることも検討しましょう。



3.M&A仲介会社を利用するメリット


 では、M&A仲介会社を利用する場合にはどのようなメリットがあるのでしょうか。税理士事務所のM&Aにおいて、仲介会社の活用は多くの場面で有効です。


 まず、M&A仲介会社は、買い手・売り手双方のネットワークを持っています。個人では出会えない層や、地域・業種を超えた相手とマッチングできる可能性が高まります。税理士事務所のM&Aでも、思わぬ好条件の相手が見つかることもあります。特に、税理士事務所同士のM&Aでは、職員の雇用継続や顧問先の引き継ぎ方法、報酬体系のすり合わせなど、当事者間で調整すべき実務的な課題が多く発生します。第三者である仲介会社が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静かつ客観的な条件交渉が可能になります。


 また、M&Aは税務以外にも労務・法務・経営戦略など、幅広い知識が必要です。仲介会社には実績のある専門家が在籍している場合も多く、実務面でのアドバイスやリスク管理のサポートが受けられます。「自分の事務所はいくらの価値があるのか?」という疑問に対しても、仲介会社は事務所価値の評価のノウハウを持っています。第三者の視点で適正な価格や条件を提示してもらえるため、納得感のあるM&Aを進めやすくなります。


 さらに、M&Aの準備段階では、情報漏洩が大きなリスクとなりますが、仲介会社を通すことで、秘密保持契約を結び、情報管理を徹底することができます。M&A仲介会社を利用することで、税理士事務所の所長が抱える多くの悩みやリスクを軽減し、スムーズな事業承継を実現できる可能性が高まります。


 M&A仲介会社を利用するもう一つの大きなメリットは、交渉や契約手続きにおけるトラブル防止です。M&Aは一度始まると長期間にわたることが多く、その間にさまざまな問題が発生することもあります。仲介会社が間に入ることで、問題が発生した際にも迅速かつ適切に対応できる体制が整っています。税理士事務所のM&Aは、事業の将来に大きな影響を与える重要な決断です。信頼できる仲介会社のサポートを受けることで、安心してM&Aを進めることができるでしょう。



4.M&A仲介会社を選ぶ際のポイント


 では、実際にM&A仲介会社を選ぶ際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。税理士事務所のM&Aは、一般企業のM&Aとは異なる特徴が多いため、以下のポイントを押さえて選定することが重要です。


 まず、税理士事務所のM&Aに特化しているか、実績が豊富かどうかを確認しましょう。税理士事務所のM&Aは、一般企業とは異なる業界特有の課題や慣習があります。税理士事務所のM&Aに特化し、実績が豊富な仲介会社を選ぶことで、より適切な提案やサポートが受けられます。


 次に、仲介会社がどれだけ多くの譲渡先候補(買い手)を持っているかも重要です。M&Aは一度始まると長期間にわたることが多く、サポート体制や担当者の対応力も確認しましょう。担当者が親身になって相談に乗ってくれるか、質問や疑問に丁寧に対応してくれるかも大きな判断材料となります。


 報酬体系についても、事前にしっかり確認することが大切です。多くのM&A仲介会社は「成功報酬型」の報酬体系を採用しており、特に「レーマン方式」と呼ばれる計算方法が一般的です。レーマン方式とは、譲渡価格に一定の料率を掛けて報酬額を算定する方法で、譲渡価格が大きくなるほど料率は低くなる傾向があります。どのタイミングで、どれだけの報酬が発生するのか、事前にしっかり確認しましょう。


 また、自事務所の規模や業種、地域に合った仲介会社を選ぶことも大切です。大手仲介会社が必ずしも最適とは限りません。過去の成功事例や取引件数、対象とした企業の業界や規模について具体的に確認しましょうM&Aは担当者との信頼関係が非常に重要であり、信頼できる担当者と出会えるかどうかも、仲介会社選びの大きなポイントとなります。



5.まとめ


 税理士事務所のM&Aは、事業承継や経営戦略の一つとして近年ますます注目されています。しかし、実際にM&Aを進める際には、情報管理や条件調整、専門的な知識など多くの課題が立ちはだかります。知り合いの税理士に相談する方法もありますが、情報漏洩や感情面、実務面でのリスクがあるため、慎重な判断が必要です。M&A仲介会社を使わない選択肢もありますが、専門知識や交渉力、リスク管理の面で課題が残ります。


 一方、M&A仲介会社を利用すれば、広範なネットワークや専門家によるサポート、客観的な条件調整、情報管理など多くのメリットがあります。仲介会社を選ぶ際は、税理士事務所のM&Aに特化しているか、実績や報酬体系、サポート体制などをしっかり確認しましょう。


 税理士事務所のM&Aは、一生に一度の大きな決断です。後悔のない選択をするためにも、信頼できる専門家や仲介会社とともに、納得のいく形で事業承継を進めてください。


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